ゾンビ企業とは、実質的な倒産状態であるにもかかわらず、金融機関や政府機関の支援を受けて営業を継続している企業だ。債務不履行の状態が続いていたり、バランスシート上で債務超過の状態にあったりする企業を指す。

2022年7月に帝国データバンクが発表した報告では、日本の企業のうちゾンビ企業が占める割合は11.3%、全国16.5万社にも上ると推計されている。

ゾンビ企業が増加すると、資本の配分が妨げられ、日本経済全体の生産性の低下も懸念される。今回は、近年のゾンビ企業の現状や「ゾンビ化」しやすい企業の特徴、経済に与える影響について解説していく。

コロナ関連融資で増加したゾンビ企業

帝国データバンクの報告では、国際決済銀行(BIS)が示した「インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が3年連続で1未満、かつ設立10年以上」に当てはまる企業を「ゾンビ企業」と位置付けている。

インタレスト・カバレッジ・レシオとは、会社の債務返済能力を測る指標。年間の事業利益の合計が借入金の利息(インタレスト)の何倍であるか、以下の式で求められる。

(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払利息+手形の割引料)

つまり、インタレスト・カバレッジ・レシオの数値が高ければ高いほど安全性の高い企業であるといえる。反対に1未満の場合は、稼いだお金で利子さえ払えていない危険な経営状態だ。

自身の収益のみでは返済しきれない負債を抱えているにもかかわらず、金融機関などの支援に依存するかたちで存続を続ける企業。それがゾンビ企業といえる。

そもそも「ゾンビ企業」という言葉は、1990年代にバブル崩壊で経営状態が悪化しながらも、金融機関などにより支援を受ける企業を指して使われるようになった。

ゾンビ企業が増えるきっかけとなったのが、2009年に施行された「中小企業金融円滑化法」だ。中小企業が資金を借り入れる条件や返済期間が緩和され、倒産を免れる企業が増加。これに伴いゾンビ企業も増えたが、2013年に同法が終了してからはゾンビ企業の割合は減少しつづけ、2019年度には9.9%と10%を割っている。

しかし、2020年度のゾンビ企業の割合は11.3%と再び上昇に転じた。コロナ禍で売上の減った企業へ無利子・無担保で融資を行う「ゼロゼロ融資」により、中小企業金融円滑化法の施行時と同じく延命した企業が増えたことが一因と見られる。