60歳台前半・後半のモデルケースで検証してみよう
モデルケースで実際に計算しながら、考えてみましょう。まずは60歳台前半のケースから。
例えば……
・特別支給の老齢厚生年金が年間132万円(月額11万円)※先述の数式で言うと①に該当
・標準報酬月額(②)が44万円、賞与(③)はなし
だとします。
11万円+44万円=55万円で47万円を8万円超えており、その2分の1である4万円がカットされる計算です。言い換えれば、11万円のうちの4万円がカットされるとなると、残りの7万円が支給される計算となります。年額で見て84万円(7万円×12月)の年金と、単純に計算して年間528万円(44万円×12月)となる給与を足すと、612万円の年収となる計算です。
もし、この4万円がカットされるのが嫌だからと給与を下げる場合は8万円下げなければいけません。給与を8万円下げると標準報酬月額が36万円、年金11万円との合計はちょうど47万円となるため、年金はカットされなくなる計算です。しかし、年金収入は年間132万円、給与は年間432万円(36万円×12月)で、合計年収は564万円となります。年金が月額4万円カットされて合計年収が612万円だった場合より48万円下がっている計算になります。
65歳以降に年金がカットされる人=高収入の人
65歳以降の年金についても計算してみましょう。
例えば……
・老齢基礎年金と経過的加算額の合計が年間78万円
・報酬比例部分(①)が年間144万円
・標準報酬月額(②)が53万円
・賞与はなし
だとします。
この場合はカットの対象となるのは報酬比例部分で、報酬比例部分は月額換算では12万円となります。12万円と53万円を足すと合計65万円。47万円を18万円超えていますので、その2分の1である9万円が月額でカットされます。残りの3万円は支給され、年額では36万円、カットされない老齢基礎年金と経過的加算額78万円との合計で年間114万円支給されます。給与は年間636万円(53万円×12カ月)ですので、合計年収は750万円です。75%(12万円のうち9万円)の報酬比例部分の年金がカットされていても、65歳以上の人としては高い年収と言えますし、636万円の給与を受けても114万円は年金が支給されています。
「この年金カットをなくしたい」とすると、カットされている額の2倍程度の給与を下げないといけません。