欠かせない金融知識の涵養とプロによるバックアップ体制

iDeCoについて、都道府県別に見た1万人当たりの加入者は、香川県が首位で549人、次いで石川県が487人、東京都460人、長野県454人と続く。金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査(2019年)」によると、上位に位置する都道府県は課題正答率が高い傾向にある。正答率で1位は香川県、2位は長野県であり、石川県や東京都も中上位の成績だ。上位の各県は、県が主導して生活設計や金融のセミナー等を実施する。

一方、DC発足から40年余りとなるアメリカでは、国民の金融リテラシーが高水準と思いがちだが、実態は思うように進展していない。2022年4月に実施された全国財務教育基金(National Endowment for Financial Education)の調査でも、自らの金融リテラシーの低さを悔やみ、約9割(88%)の成人が、高校卒業までに家計管理についてのセミナーや金融教育の年間コース受講を必須にするよう、州政府に求めている。

日本でも継続教育が必須となったが、単なる金融・投資教育や退職資産づくりの教育だけでは不十分だ。アメリカなどで定着しつつあるように、日頃の家計管理や財産管理、あるいは借金管理など、個々の従業員の金融ウェルネス面での向上指導があってこそ、退職準備の意識向上につながる。日々の家計管理についての指導は欠かせない。

個別指導も大切だ。先進国で定着している、若いときはハイリスクハイリターンの株式等の投資比率を高くし、退職が近づくにつれローリスクローリターンの債券等の比率を高める「ターゲット・デート・ファンド」では、とりわけ高齢期になった加入者のさまざまなニーズに応えきれない。アメリカでは50歳ごろから個別指導が中心となるマネージド・アカウントに資産を移管させる人が多い。まだまだ資産を増やし続けたい人、年金制度外の資産にも目配りしたい人など、個別のニーズはさまざまだ。通常、特定の金融機関に所属しない独立系金融アドバイザー(IFA)が、その指導に当たる。日本でも、こうしたIFAは増加し、業界団体も創設されたが、その役割はますます大きくなるであろう。