スマートフォンやパソコンなど情報端末の普及とともに、現代は情報過多ともいえる状況となりつつあります。その状況の訪れは資産形成や投資の分野も例外ではありません。

玉石混交ともいえる情報が氾濫している中、自身の資金プランや投資行動においてどの情報を参考にすればいいのかと困惑した経験のある人は少なくないでしょう。

小倉健一氏の著書『週刊誌がなくなる日 -「紙」が消える時代のダマされない情報術 - 』では、メデイアを取り巻く昨今の環境についての詳細から、自分に必要な情報を取捨選択する力を磨く方法まで解説されています。今回は特別に、第3章「儲かるメディア、死ぬメディア」、第4章「デジタル化で起きる大問題」の一部を公開します(全3回)。

●第1回を読む

※本稿は小倉健一『週刊誌がなくなる日 -「紙」が消える時代のダマされない情報術 - 』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

10年後、世の中の「49%の職業」は、AIに取って代わられる

デジタル時代に求められる重要な能力には「読解力」があげられる。しかしながら、その根幹部分は危機に瀕している。日本人の読解力が今、ピンチを迎えているというのだ。

新井紀子氏が著した『AI VS 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)は、その点をズバリと描き出している。

「日本の中高生の読解力は危機的と言ってよい状況にあります。その多くは中学校の教科書の記述を正確に読み取ることができていません」

新井氏の指摘に驚く人は少なくないだろう。学校の授業で日常的に使用し、定期テストでも学習状況を確認しているはずの教科書の記述が「正確に読み取ることができていない」というのだ。

これは何を意味するのか。新井氏は日本人の読解力についての調査を実施した結果、次のことが浮き彫りになったという。それは、日本人の弱点を率直に言い当てたものでもある。

「日本人の中高生の多くは、詰め込み教育の成果で英語の単語や世界史の年表、数学の計算などの表層的な知識は豊富かもしれませんが、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正確に理解できないということがわかったのです。これは、とてもとても深刻な事態です」

つまり、英単語や歴史年表などの「暗記モノ」を覚えることは得意であるものの、文章理解は不得意であるというのだ。新井氏が警鐘を鳴らす詰め込み教育の「成果」は、デジタル時代には「弊害」となり得る。なぜならば、単語や年表を覚えたり、数学の計算をしたりするというのは、いずれもAIの得意分野である。もっと言えば、人間に代替し得るものばかりと言えるからだ。

野村総合研究所と英オックスフォード大の推計(2015年)によれば、10~20年後には日本の労働人口の49%が就いている職業は、AIによって代替可能になるとされる。言い換えれば、技術的には「なくなる仕事」となる可能性が高い。事務員や受付係、タクシーやバスの運転手、検針員や測量士といった秩序的・体系的な動きが求められる職業や、特別な知識・スキルが求められない職業は近い将来にAIで代替し得る。

逆に、協調や理解、説得やネゴシエーションといった他者との関係性が高い職業に加えて、サービス志向性が求められる職業もAIでの代替は難しい傾向にある。創造性が必要な業務や非定型な業務は将来においても人間が担う可能性が高いものだ。

これは、AIがいかに進化しても人間との「すみ分け」は可能であることを意味しているが、これからのデジタル時代を担う日本の中高生の多くが目指すであろう職業は、AIの得意分野とバッティングしている。人間が伸ばしていくべき分野を苦手にしてしまっているのだ。