なぜ夫は変わってしまったのか

事務所に現われた文香さんは看護師というより教師という雰囲気の、背筋の伸びた折り目正しい雰囲気の女性でした。言葉遣いも美しく丁寧で、“良家の奥様”だった過去が偲ばれます。離婚から約3年――気持ちの整理がついたのか、悲壮感はなく、今の環境で前向きに生きようとするポジティブな雰囲気が漂っています。

「今日は、教育費や老後のお金などについてのご相談に伺いました。離婚してからは日々の生活に追われ、長い目で見たお金のことを考える余裕がなかったので。それに離婚してしばらくは『なんでこんなことになってしまったんだろう』と落ち込む日もあれば、『夫を許さない!』と恨めしく思う日も……何か考えようとしても頭が働かなかったのです」

と冗談交じりにおっしゃいました。そして、文香さんはまず、離婚に至った経緯を話し始めました。

「以前の夫は、家族思いの絵に描いたようなマイホームパパだったのです。子どもの幼稚園や学校の行事に率先して参加したり、家族で海水浴に出かけたり、とても幸せでした」

そんなご主人がなぜ急に変わってしまったのでしょうか。

「夫はある時期から経営者の勉強会や、交流会に積極的に参加するようになりました。そこで、同じような境遇の仲間ができたらしく、さまざまな活動にのめりこむようになったのです。平日の帰りも遅くなったし、週末に付き合いのゴルフなどに出かけることも多くなりました。子どもたちのことも私に任せきりになり、夫婦の会話も減っていって……気づけば夫は別人のようになっていました。そして、とうとう離婚を切り出されたのです」

お話を聞く限り、文香さんには落ち度はなく、ご主人の付き合いが変わっていく中で心変わりしたようですが、離婚の話し合いはスムーズに行われたのでしょうか。

「子どもたちのためになんとか離婚は思いとどまってほしかったのですが、夫の意思はとても固く、無理でした。子どもたちの親権は私が持ち、経済的に困らないようにしてもらう条件で離婚に応じることにしたのです」

養育費など離婚の条件は? そして、文香さん自身の老後資金準備のためにすべきことは? 後編へ続く>>