〈前編のあらすじ〉
相談者の五十嵐文香さん(仮名)は、病院勤め(准看護師)をしながら看護学校に通う35歳のシングルマザーです。小学5年生と2年生の元気な男の子を育てながら、正看護師を目指しています。
かつて“絵に描いたようなマイホームパパ”だった元夫から、離婚を切り出され、約3年前にシングルマザーとなった過去を持っています。
看護師を目指しているのは、何があっても自力で生きられるようにという思いからですが、特に心配なのは教育費と自身の老後資金準備――というわけで、FP相談にやってきました。
後編では、元夫との離婚の条件から、晴れて正看護師になり、収入アップが実現した際の具体的なマネープランまで解説していきます。
離婚の条件は…
文香さんご夫妻の離婚の条件とは、
・自宅には文香さんと子どもたちが住み続け、住宅ローンは夫が負担
・住宅ローンが完済できたら自宅を文香さんの名義にする
・子どもたちの養育費を毎月10万円支払う
・子どもたちそれぞれの大学進学などでまとまったお金が必要なときは、その都度、負担割合を話し合う
というものでした。
比較的恵まれた条件ではありましたが、当時の文香さんは「これからは働かなければならない」ことへの不安で頭がいっぱいになったのだそうです。結婚前にわずかばかりの社会人経験があるものの、ずっと専業主婦だった自分に何ができるのだろう、何をして働けばいいのか分からないし、可愛い子どもたちに寂しい思いもさせたくない……と、最初のうちは転職を繰り返していたそうです。
「手始めにパートの事務職に就いたのですが、今思うと恥ずかしくなるほどの世間知らずで。小さい子どもがいるのに残業を命じられることなどがあると、すぐに辞めてしまいました。何回目かの転職で医療事務をしたのですが、そこで30代の今からでも看護師を目指せることを知りました」
文香さんは働きながら通える看護学校に入学し、まずは准看護士の資格を取得。現在は、同じ看護学校の正看護師のコースに進み、勤務先のクリニックで通学のために勤務日などの便宜を図ってもらっています。
「まだ学校に通っている身なので収入もわずかだし、学費の負担もあります。でも、正看護師の資格が取れれば、今の職場で正職員として働ける予定です」
働きながらの看護師を目指すのは大変ですが、文香さんなりの考えがあってのことです。
「元夫は約束を守ってくれると信じています。離婚すれば私たちは“元夫婦”の他人になってしまいますが、子どもとの縁は切れませんから。ただ、元夫の会社は建設業で、業績は良くも悪くもありません。将来性のある業種とはいえませんから、いつか業績が悪化して養育費の支払いができなくなる可能性もあると思うのです。彼のお金をあてにして何もしないでいて、その時になって慌てるような事態はイヤなんです」