空白の時間
彩子さん(仮名、50歳)は金融関係のシステム会社に勤めるシステムエンジニア。新卒から同じ会社に勤めており、現在は40人の部下をまとめる管理職です。30歳の時に一度結婚しましたが、3年後に離婚して以来、おひとりさま。実家は3駅離れた隣町にあり、弟夫婦が母親と二世帯住宅で暮らしています。
久しぶりの長期休暇、彩子さんは仲間と趣味の登山に出掛けることを楽しみにしていました。しかし、仲間のうち数人が新型コロナウイルス感染症のために行けなくなり、彩子さんも予定を取りやめざるを得ませんでした。
ぽっかりと空いてしまった時間に何をしたらいいか、彩子さんには見当もつきません。とりあえず近所の図書館に行ってみると、たくさんの高齢の男性が新聞や本を読みふけっています。受験勉強をする学生の鉛筆の音がうるさいと叱りつけている人もいて、普段図書館に来ることのない彩子さんは少し驚きました。
おひとりさま高齢者の時間の使い方
総務省統計局が行っている社会生活基本調査(2016年)は、国民の社会生活の実態を把握するために、生活時間の配分や余暇時間での主な活動の状況を5年ごとに調べています。
65歳以上の高齢者の「仕事等(通勤・通学・仕事・学業)」に使う時間が男性で2時間7分、女性が55分で、前回の調査から少し増えていました。また、仕事を持っている割合も男性は38.3%、女性は21.0%で、やはり前回調査と比べて約3%増えていました。家事に使う時間はわずかではありますが減っていて(男性36分、女性2時間52分)、高齢になっても仕事を続ける人が多くなっていることがうかがえます。