需要は伸びず、価格転嫁できていない国内の物価上昇リスク

もうひとつの問題は、価格転嫁が出来ていない企業がいよいよ我慢できなくなった時、消費者物価指数が今以上に大きく跳ね上がる恐れがあるということです。

米国の7月の消費者物価指数は、前年同月比で8.5%もの上昇となりました。日本の消費者物価指数がここまで上昇するかどうかは何とも言えませんが、仮に3%、4%まで上昇したら、家計の引き締め意識が今以上に強まり、国内消費がさらに冷え込むリスクが浮上してきます。

もちろん、価格転嫁が出来た企業が増益になり、その分を社員の給料引上げにつなげられれば消費意欲が高まり、前述のリスクを緩和できる可能性はあります。が、経営側から見れば、特に今の日本企業は、賃上げは容易に行えたとしても、経営環境が悪化した時の賃下げは、そう簡単にできません。

そうなると、仮に価格転嫁が進んで増益基調になったとしても、経営判断として賃上げには慎重にならざるを得ず、消費者物価指数の上昇と賃上げの間には、相応のタイムラグが生じることになります。

国内需要の高まりで企業業績が好転し、社員の賃金が上がって、それがさらに国内需要を高めるという流れのなかでの物価上昇なら、それは決して悪い物価上昇ではないのですが、今の日本に起こっている物価上昇は、国内需要が盛り上がらず、したがって企業も、価格転嫁と賃上げに踏み切れないなか、ウクライナ問題や対ロ制裁に対する報復措置、円安といった外的要因で起っているだけに、かなりリスクの高い物価上昇であるという認識は、持っておく必要がありそうです。