8月の米国株マーケットの見通しとポイント

1950年1月~2020年5月までのS&P500の月別パフォーマンスを比較すると、8月は-0.1%とマイナスであり、月単位で比較すれば下落しやすい時期といえます。とはいえ米国企業の四半期決算は8月上旬まで続くので、決算発表の行方によってマーケットの流れが大きく変わる可能性も考えられます。

その一方、米国株式市場には「サマーラリー」という考え方もあります。これは7月4日の独立記念日から9月第1月曜日のレーバーデー(労働者の日)にかけて、長期休暇前に株を仕込む投資家が多くなるとされる時期であり、同期間に限っていえば株価は値上がりする確率が値下がりする確率を上回っています。つまり8月は低調なパフォーマンスで終わることが多いものの、季節性アノマリーも鑑みれば、サマーラリーの期間は強気相場であり、8月は種まきの時期とも考えられます。

いずれにせよ米国経済にとって最大の課題であるインフレがどのような状況にあるのか、10日に発表される米消費者物価指数(CPI)は、8月の最も注目すべき指標の1つでしょう。

おわりに

7月26~27日に行われたFOMCにおいて、予想通り0.75%の利上げが継続されることとなりました。さらにFRBパウエル議長は9月のFOMCにおいても0.75%の利上げの継続の選択肢を残しており、次回までの8週間の間に多くのデータを用いて、利上げ政策を判断すると発言しました。

また「今後の利上げペースの緩和」に初めて言及したことがマーケットにプラス材料となり、インフレ率を目標の2%に戻すことが不可欠であるとを力強くコミットしたことも、市場に一定の安心感をもたらしました。結果として、パウエル議長の会見中にナスダックを中心に主要3指数が軒並み急騰していきました。何よりもFRBがマーケットとしっかりと対話を続けていることを印象付けるには充分な会見であったといえるでしょう。

今後の米国株投資を検討する上で、確かにインフレ問題は根強く残っているものの、FRBへの信頼感と米国経済の他国と比べた場合の優位性は何も変わっていないことから、長期投資で見た場合の米国株投資の魅力は今後も続いていくと筆者は考えます。

 

執筆/鈴木 林太郎

金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数。