充実した老後を送るために、資産運用などによって「資産寿命」を延ばすことも大切ですが、日常生活を制限なく送れる「健康寿命」も同様に重要です。

医師の鎌田 實氏は、介護保険のお世話にならず、何歳になっても自分の足で行きたいところへ行ける元気な体を手に入れるには、筋トレをはじめとする運動で筋肉を増やす“貯筋(ちょきん)”が必須と言います。著書『疲れない 太らない ボケない 60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』ではご自身も実践し、運動が苦手な人でも続けやすい20のズボラ筋トレを紹介しています。

今回はそんな『疲れない 太らない ボケない 60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』より、貯筋の重要性について解説する第2章を特別に公開します(全4回)。

●第2回はこちら

※本稿は鎌田 實『疲れない 太らない ボケない 60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

スクワットとかかと落としだけでは不十分

僕が貯筋のための運動をすすめるのは、この本が初めてではありません。2019年に出版した『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)も、貯筋のやり方について書いた本です。

この本は僕自身の経験から生まれました。今から5年ほど前、80kgまで体重が増えて体力の衰えも感じるようになったことから、僕自身が講演会などで推奨してきたスクワットとかかと落としを自分でも始めることにしました。

この2つの運動を3年間続けたところ、体重は70kg、ウエストは9cm減でメタボが改善し、血圧や血糖値、コレステロール値も正常になり、骨密度も130%まで増加。見た目が引き締まったことで、おしゃれも楽しめるようになりました。

今ではこの20種の運動を毎日組み合わせて行っています。なぜでしょう。

スクワットとかかと落としは、フレイル予防の基本的な運動ですが、いずれも下半身の筋力を鍛える運動であるため、上半身の筋力強化には十分ではありません。

上半身の運動で大事なのは腹筋と背筋、そして、インナーマッスルといわれる体幹筋です。体幹筋は体のバランスをとるために必要な筋肉で、この筋肉を鍛えることによって、要介護になるきっかけの1つである転倒を予防します。

もう1つ、骨を鍛える運動も重要です。筋力が低下していると、ちょっとしたことでバランスを崩して、つまずき、転倒してしまいます。そのとき、骨も弱くなっていると、大腿骨骨折を起こして寝たきりになるという悲劇がたくさんあります。

大事なのは筋肉と骨を鍛える活動。そこで、貯筋運動のことを「筋活(きんかつ)」、骨を鍛える運動を「骨活(ほねかつ)」と呼ぶことにします。