新興国通貨が軒並み安値圏に
1980年代後半から1990年代前半まではNIES、2003年から2010年代半ばくらいまではBRICsやVISTA、NEXT11、MENAといった新興国が、投資対象として注目を集めました。
NIESは新興工業地域群のことで、香港、シンガポール、台湾、韓国を指しています。またBRICsはブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国。VISTAはベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの5カ国。NEXT11がメキシコ、ナイジェリア、韓国、ベトナム、インドネシア、バングラディシュ、パキスタン、フィリピン、トルコ、イラン、エジプトの11カ国。そしてMENAは中東(Middle East)と北アフリカ(North Africa)を合わせた地域のことです。
これら新興国の通貨が軒並み安値圏になっているという記事が、日本経済新聞の7月14日付朝刊に掲載されました。同記事では、インドルピーやチリペソ、トルコリラ、ブラジルレアル、韓国ウォン、フィリピンペソなどが過去最安値更新、もしくは過去最安値圏にあると書かれています。なかでもトルコリラの下げ方はひどく、2014年11月末から2022年6月末にかけて、対円で84.79%も下落しました。
ここに来て新興国通貨が下落しているのは、FRB(米連邦準備理事会)の利上げにともなって、金利の高い米ドルが注目され、新興国通貨から米ドルへの資金シフトが生じているからです。
ちなみに新興国通貨だけでなく、米ドルは対円でも1ドル=140円に迫る水準まで買われ、ユーロも1ユーロ=1ドルというパリティ(等価)を割り込みました。ユーロが1ドルを割り込んだのは、実に20年ぶりのことです。
このように、外国為替市場では米ドル一強の状態が続いていますが、新興国通貨が軒並み安値圏に下落するなかで、改めて留意しておきたいのは、外国為替レートが単なる通貨と通貨の交換比率である、ということです。
特定、あるいは複数の新興国の株式や債券を組み入れて運用する投資信託や、新興国通貨建ての債券が、個人向けに販売されています。特に新興国通貨建ての債券は、表面利率が高く設定されるため、超低金利から脱することのできない日本では、結構人気を集めています。