人生100年時代――老後に備え老後資金準備を進めることと同じくらい大事なのが、「長く意欲的に働く」こととされています。70 歳までの就業機会の確保を企業に求める「改正高年齢者雇用安定法」もその流れを後押し、意欲のある人はエイジレスに活躍できる時代に転換しつつあります。

一方、数年~10年後に60代を迎える「バブル入社組」ミドルシニアの中には、定年後の働き方、キャリアの切り開き方が分からないと悩む人も多い模様です。

話題の書籍『定年NEXT』の著者・池口武志氏は、そんな悩めるミドルシニアにとって大きなヒントになるのは「ロールモデル」の存在だといいます。『定年NEXT』には、若い人にはない経験と知恵、人脈を生かし、人と人、組織と組織を「繋ぐ」働き方で輝く24人の「リエゾンシニア」たちが、どう自身のキャリアに向き合い、切り開いてきたのかに迫るインタビューが掲載されています。

そんな『定年NEXT』より、今回はミドルシニアの“働く”を取り巻く環境の大きな変化について解説した第1章の一部を特別に公開します(全3回)。

●第2回を読む

※本稿は池口武志『定年NEXT』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。

ジョブ型人事制度の適用対象は中高齢世代

年齢軸から人物軸への転換の動きの中で、注目されているのがミドルシニアへのジョブ型人事制度の導入です。ジョブ型についてはメディアでも大きく取り上げられ、大学院で情報工学を学んだ優秀な学生を年収1000万円で採用するとも報じられています。多くのミドルシニア社員にとっては、ジョブ型は自分たちに関係のない話だと思っているかもしれませんが、じつはミドルシニア社員を対象に実験的にジョブ型を導入したいと考えている企業も少なくありません。

ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に記したジョブディスクリプション(職務記述書)に定めた職務や賃金などの労働条件などをあらかじめ示して採用するものです。給与は担当する職務(ポスト)ごとに決まる「仕事基準」であり、職務が変わらない限り、賃金も変わりません。社内外にジョブディスクリプションを明示することで、優秀人材の獲得だけではなく、社内での自発的なチャレンジやキャリア自律を促進していこうという狙いです。定年後研究所の企業インタビューでも、メンバーシップ型雇用から、ジョブ型雇用への移行の検討や労使協議は確実に進んでいることが窺えました。

このジョブ型人事制度を60歳以降の再雇用社員に実験的に導入しようとしている企業の場合は、再雇用契約を結ぶにあたり、年功的賃金カーブを意識する必要もありませんし、担う仕事と報酬を紐付けることになります。しかも、そこでの賃金の指標は一般的な労働市場における賃金水準が使用され、賃金がダウンするケースもあると聞きます。

その反面、中高年社員が長年蓄積してきたスキルや、人的ネットワークを積極的に活用する企業では、ジョブによっては、60歳以降、賃金水準が上昇するケースもあります。まさに「必要とされる」スキルとネットワークを蓄え、自らの言葉で自分の付加価値を語れるようになることが求められています。