コロナ禍で進行するキャリア自律の動き

多くの方が体感されたように、コロナ禍でテレワークが急速に広がり、在宅勤務、サテライトオフィスでの勤務、更にはワーケーションの出現まで、働き方の多様化が進んでいます。イノベーションや多様性が企業発展の礎であるとの認識が広がり、会社は個人の裁量性を幅広く認める自由度の高い働き方を推進すると同時に、個人が積極的にスキルを磨き、キャリアを築く「キャリア自律」を求めています。

働き方改革によって多くの企業で残業時間が減少しました。テレワークによって通勤時間がなくなり、職場の飲み会も減少し、自由に使える時間も増えています。読者の皆さんはどのような時間の使い方をしているのでしょうか。こうした変化の中で、将来を見据えて積極的に動き出しているミドルシニアも増えています。

たとえばオンラインの資格取得講座を受講している人、ボランティア活動を始めようとする人、副業を探す人も増えています。プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会には副業に関心があるミドルシニアの登録者がかなり増えているそうです。学び直しによる自分磨きや副業を通じてキャリアの可能性を広げることに動き出す人がいる一方で、時間を持て余す人もいるかも知れません。こうした時間の使い方の差が今後の職業人生においても大きな格差となって現れてくると思います。

「新現役交流会サポート」という一般社団法人があります。新現役とは、現役に戻るという意味ですが、企業のOB・OGと信用金庫・信用組合の取引先の中小企業とのお見合いを設定し、サポートするのがこの法人の役割です。登録しているのは大企業のOBが多いのですが、新現役交流会の代表理事は「コロナ禍以降、50代の現役の社員の登録が増えている。今までは60代半ばから80歳までの人の登録が多かったが、副業に関心を持つ50代が増えている」と言います。コロナ禍で経営環境が激変し、1つの会社に依存するのはリスクだと考える人が増えていることも背景にはあるようです。この代表理事には、第4章で詳しく語っていただいております。

副業もそうですが、まず何らかの行動を起こすことで、自分のやりたいことが見えてくる人もいます。一方、学び直しにしても、何を勉強したらいいのか、何から始めたらよいのかわからないと言う人も多いと思います。その際に大事なことは、自分自身の生き方を振り返り、将来に向けての「座標軸」を心の中に描いてみることだと言われています。