国民年金(基礎年金)の受給額47都道府県別ランキング
さて、話を1階部分の老齢基礎年金に移しましょう。
まず上記老齢厚生年金と同様に、都道府県別に老齢基礎年金の平均月額をランキングすると以下の通り。
都道府県別平均年金月額(老齢基礎年金)
なお全国平均は5万6358円でした。
厚生老齢年金に比べ、全体的に差が緩やかなことに気づくのではないでしょうか。1位と47位の差は7000円弱程度で、年ベースにすると9万3000円弱の差になります。決して小さな金額ではありませんが、老齢厚生年金と比べればその開きはわずかです。
ある意味それは当然で、老齢基礎年金の受給額は20歳から60歳まで納めた場合の“満額”は一律だからです。なお令和4年度の老齢基礎年金(満額)の支給額は月額6万4816円(年額77万7800円)と決まっています。
むしろ、なぜ差がつくのか? それは老齢基礎年金の算出方法に秘密があります。
その数式は…
77万7800円× (保険料納付済月数 + 全額免除月数×4/8 + 4分の1納付月数 + 半額納付月数×6/8 + 4分の3納付月数×7/8 )/480月
です。
例えば20~60歳の40年間・480月にわたり、国民年金保険料を納め続けた場合は非常に簡単な数式になります。
保険料納付済月数=480月ですので、
77万7800円×480/480=77万7800円 です。
また別のやや極端な例として、480月間ずっと全額免除を受けたとすると、77万7800円×240/480となり※3、38万8900円です※4。
※3 全額免除月数の箇所に480を入れ、480×4/8でまず分子240を算出している。
※4 国庫負担2分の1で算出した場合。
(話が横道にそれますが、なぜ40年間ずっと保険料を払わなくても、老齢基礎年金は半額を受給できるかというと、老齢基礎年金の半分に国庫、つまり税金が投入されているためです)。
数式に登場する、全額免除や半額納付とは、失業などによって収入が下がった際に申請することで、全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の4段階で、納付を免除されることを指します。ただ、その免除を受けた期間は“フル”では、納付済み月数としてカウントされないというのが、この数式の意味するところです。
また「免除」と「未納」は全く異なる点にも注意が必要です。免除は申請等の手続きをして、かつ認められて初めて成立します。一方、何ら手続きせず、ただ払わないでいる未納は、上記数式のどこにも月数としてカウントされないのです。
ここまでくると、上記の都道府県別の老齢基礎年金受給額における差の意味が分かってくるのではないでしょうか。受給額が少ない県の人ほど、年金納付の免除を受けている、あるいは未納をしている期間が多いと考えられます。
多くの人にとって、老後生活の基盤となる公的年金。その受給額の実態を都道府県別平均という切り口で見てきました。
特に現役世代のサラリーマンは、月々の保険料が給料から天引きされているため、公的年金に関心を向けにくいかもしれません。しかし、公的年金が自分の老後をどう支えてくれるのか、その計算方法や給付額の目安などを知っておくことは重要です。
その上で、自分はどんな老後生活を送りたいのか、それにはいくらかかり、年金で足りない分はいくらになりそうか――老後資金計画はこの順番で計算し考えるべきです。つみたてNISAやiDeCoで資産形成を始める際には、併せて「ねんきん定期便」でご自身の年金納付状況を確認することをおすすめします。