ニッセイ基礎研究所が毎月発行している「年金ストラテジー」は、年金運用や年金制度など、年金に関連する情報を提供しているレポートです。どちらかというと、プロ向けのレポートではありますが、もちろん個人が読んでも役に立つので、興味がある方は一度目を通してみて下さい。ニッセイ基礎研究所のウェブサイトから誰でも閲覧できます。今回、取り上げたいのは「年金ストラテジー(vol.312)」の記事で、「日本のバリュー株に『本当の値打ちがある』のか」という、京都大学名誉教授の川北英隆氏が書いた考察文です。

インフレによる金利上昇でバリュー株への資金シフトが加速

バリュー株(割安株)が良いのか、それともグロース株(成長株)が良いのかについては、個人向けマネー関連の記事でもよく取り上げられます。一般的に、「グロース株は大きな値上がりが期待できる反面、急落するリスクがある。バリュー株は値動きが重く、誰かがその価値を見出さない限り株価の値上がりが期待できない反面、株価が急落するリスクが小さいので、長期投資に向いている」などと解説されていて、何となく分かったような、分からないようなモヤモヤ感を抱く人も少なくないと思います。

ちなみに今年に入ってからの国内株式市場を見ていると、年初からグロース株が大きく売り込まれ、バリュー株と見なされる銘柄に資金が向かったなどという記事をよく目にしました。

その理由は、世界的なインフレで金利上昇の動きが見られるようになってきたからです。これは主に米国株式市場での動きですが、日本の株式市場もそれに連動するかのように、グロース株からバリュー株への資金シフトが起こりました。

なぜ金利が上昇するとグロース株が売られるのか、については、諸説紛々ですが、基本的な見方としては、グロース企業の場合、それ以外の企業に比べて業績の成長スピードが速く、したがって設備投資意欲なども旺盛であるため、金融機関からの借入が大きいから、というものです。金融機関からの借入には金利負担が伴います。そのため、金利が上昇すると資金調達コストの負担が増すため業績悪化要因となり、株価が下落するというわけです。

あるいは、金利が上昇して債券の運用利回りが向上すれば、わざわざリスクを取って株式に投資する必要はないと考える投資家が多いことから、特に上昇局面で株価が高く値上がりする傾向のあるグロース株への投資が敬遠され、株価が下がりやすくなるという見方もあります。