日本市場で本当に価値あるバリュー株を見分ける3つの視点

次にPBR1倍割れの企業の割合ですが、日本は52.4%だったのに対して、米国は3.0%でした。

川北英隆氏がレポートで取り上げた、この2つの比較からも、米国におけるバリュー投資の概念を、そのまま日本に持ち込むのはどうなのか、という疑問が浮上してきます。前述したように、PBRを求める計算式は、

PBR=株価÷BPS(1株あたり純資産)

ですが、実は他の計算式もあります。それは、

PBR=PER×ROE

というものです。PERは1株利益に対して株価が何倍まで買われているのかを見るための指標で、その計算式は、

PER=株価÷1株あたり当期純利益

次にROEは、自己資本でどれだけの利益を上げたのかを見るための指標であり、計算式は、

ROE=1株あたり当期純利益÷1株あたり純資産

になります。したがって、両方をかけると「株価÷1株あたり純資産」になるため、PBRとイコールになります。

つまり、PBRが低いということは、

① PERが低くてROEも低い
② PERが高くてROEが低い
③ PERが低くてROEが高い

という3つのパターンが考えられるのですが、①は株価が収益に対して割安でも、ROEが低いのですから資本効率が悪い、つまり株主から提供されている資本に期待されている利益を上げられていないことを意味します。

次に②ですが、これは資本効率が悪いうえに、株価は利益に対して割高水準に買われていますから、早晩、株価が急落するリスクがあります。

そして③は、資本効率が高いのに、株価が利益に対して割安に放置されている状態ですから、お宝の割安銘柄である可能性が高いと考えられます。

米国では3.0%しかないPBR1倍割れ銘柄が、日本では52.4%を占めるという現実を、どう考えるべきでしょうか。

同レポートでは「PBRで評価した日本市場でのバリュー株に対し、『本当にバリューがある、すなわち割安でお値打ちなのか』つまり一般の投資家として投資に値するのかという疑問を投げかける」と書かれています。つまり上記3パターンのうち、③のお宝銘柄がどれだけあるのか、ということです。バリュー投資をするにしても、単純にPBR1倍割れ銘柄をスクリーニングするだけでなく、PERとROEの関係性もチェックしてから、投資するかどうかを判断するべきでしょう。