経営難の地域金融機関。含み損を抱える有価証券投資がさらなる損失拡大の引き金に

なかでも、第二地方銀行のような規模の小さい金融機関は、もともと地元の個人から集めた少額預金を、地元の中小・零細企業に貸し出して利ザヤを稼ぐ、という商売をしてきましたから、この手の地元企業が次々に廃業を迫られている現状において、地域金融機関の経営が苦しくなるのは当然のことです。それは、きらやか銀行にとっても例外ではありません。

翌日付の日本経済新聞朝刊では、今回の公的資金申請の一因として、「米利上げなどによる金利上昇で、外債中心の有価証券の含み損が膨らんだため」とし、「2022年3月期は満期保有を目的としない外債などの『その他有価証券』の含み損が1年前の4.6倍の121億円にまで広がっていた」と報じています。

含み損を抱えている有価証券は、それを売却して損失を確定させなかったとしても、価格が大幅に下落したら、帳簿の価格を引き下げて損失を計上する減損処理が求められます。

融資先は、銀行などの金融機関にとって「運用先」と同義です。前述したように、地域金融機関は有力な運用先である融資先がどんどん減っているため、預金を通じて集まっている資金を運用できない状況に陥っているのです。そこで別な運用先として目を付けたのが、投資信託や外国債券でした。

国内金融機関の多くはかねてより、運用先のひとつとして国内債券をポートフォリオに組み入れていましたが、昨今は国内金利がほぼゼロの状態だったため、少しでも高い金利が得られるという期待から、国内債券の一部を外国債券に切り替えていました。

これも記事中の内容ですが、「地銀は16年3月末時点で99兆4000億円だった国内債を21年9月末には84兆円まで減らし、投資信託を11兆円増の21兆8000億円、外債を2兆3000億円増の19兆5000億円に積み増した」、「有価証券に占める外国債券や投資信託などの割合は21年3月期末に37%で、10年前に比べてほぼ倍増した」と書かれています。

通常の企業向け貸付に対して、有価証券投資は高いリターンが期待できるものの、逆にマーケットで逆風が吹いた時、大きな損失を被るリスクが高まります。実際、きらやか銀行は米債投資にかなり積極的だったとも言われています。

恐らく、これはきらやか銀行に限った話ではないでしょう。地方の地域金融機関はどこも似たり寄ったりの状況にあると考えられます。だとすると、公的資金の申請はきらやか銀行に止まらないのではないかと危惧されます。

「日本の銀行は数が多過ぎる」と言われているだけに、公的保険の申請が今後増えるような状況になれば、地域金融機関を中心とした銀行業界再編の動きは、再び加速する可能性があります。