インドでは財閥交代の予感も!? 再エネ企業が株価上昇

ランキングの中で、インドの代表的財閥リライアンス・インダストリーズの会長であるムケシュ・アンバニ(10位)に迫る勢いなのが、同じインドのゴータム・アダニ(11位)だ。ゴータム・アダニは新興財閥アダニ・グループの創設者。インドはもともと老舗の財閥の力が非常に強く、自動車や石油産業を独占してきた。アダニは大学中退後にアダニ・グループを設立。創設当時はグジャラート州の小さな貿易会社にすぎなかったが、その後、港湾建設や発電事業に進出した。特にエネルギー事業で大きな成功をおさめ、世界最大の太陽光発電開発会社アダニ・グリーン・エナジーの株価が上昇して大富豪となった。一時はアンバニの資産を抜き、「アジア一の大富豪」と報道されたこともある。

もとはリライアンスも1950年代以降に繊維や石油化学の分野で成功し、タタグループなどに比べると「新興」といわれた財閥だった。インドを代表する化石燃料のビッグカンパニーを、再生エネルギービジネスの雄が追い抜こうとしている状況が、世界の縮図を見るようで興味深い。アダニ・グループは昨年末、グリーン水素プロジェクトを推進する新会社を設立。世界最大の再エネ企業をめざすという。ゴータム・アダニはモディ首相とも懇意といわれており、政治家との交渉も上手い。今後のインド経済のキーパーソンになりそうだ。

インドは人口抑制政策を断念したため、これが逆に功を奏した。中国に比べても高齢化のスピードがかなり遅く、若年層の人口が多い。この人口ボーナスが当分続くことを思えば、今後はますます存在感を示してくるだろう。これからも順調に「富豪」を生み出していきそうだ。

日本の大富豪1位にはファーストリテイリング創設者、柳井正が輝いた。世界ランキングでは54位で、推定資産額は261億ドル。日本人の2位はキーエンスの滝崎武光(世界61位)、3位がソフトバンクグループの孫正義(世界74位)。昨年より日本の富豪は減り、韓国より1人少ない40人がランクインということになった。

ビリオネアは減っているが、ランキング上位者は資産を増やす

一方で、今回の長者番付では、格差のシビアさも浮き彫りとなった。ビリオネアの数は、2021年の2755人を下回る2668人。株式市場の低迷などが原因で、資産を減らした人物が多かったとされている。しかし、番付の上位につけた20人の保有資産の合計は、昨年の1兆8000億ドルから2兆ドルに増額。経済成長が鈍化しても、ランキング上位の人物たちはむしろ資産を増やしている。一部の大富豪が世界の富を独占している状況は、ますます顕著になってきている。

EV車や再生エネルギーで財を成した人物がランクインしていることを思えば、新しい時代が来ているといえるだろうが、その一方でますます富の独占が進み、世界の格差が広がっていることは皮肉に思える。貧困層の増加は、結果的に経済にも悪影響を及ぼす。健全なビジネスの成長をめざしながら、一方で再分配や格差是正を考えていくことが、世界の課題といえそうだ。