世界の長者番付、今年の新顔に注目

少し前だが、今年も米経済誌『Forbes』の長者番付が発表された。2022年版の世界長者番付によると、世界第1位の資産の持ち主はテスラのCEO、イーロン・マスク。前年まで4年連続1位だったアマゾンの創業者、ジェフ・ベゾスを抜いて、ついにトップを飾った。Twitterの買収に440億ドルという巨額の提案をしてニュースになったことも記憶に新しい。マスクの総資産推定額は2190億ドル(約27兆5900億円)。これは小国の国家予算レベルであり、中国の2022年の軍事予算をも越える金額だ。

長者番付のTOP10にはビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットなどおなじみの顔が並ぶが、ランキング全体を見てみると、近年の傾向が出ていて面白い。まず、19位にランクインしているのは、暗号資産取引所・バイナンスの創設者であるチャンポン・ジャオ(趙長鵬)。2021年では19億ドル(1664位)だった資産額を650億ドルにまで増やし、大きくランク上げしているところに、世界のファイナンスの変化を感じる。

世界の長者番付 上位20人

出所:2022年4月5日Forbes発表  https://www.forbes.com/billionaires/

暗号資産やNFT、中国のテック企業経営者も躍進

同ランキングは10億ドル以上の資産を保有している人物=ビリオネアを対象としており、上位ランキングには食い込まなかったものの、世界最大のNFTプラットフォームを運営するオープンシーの共同創業者であるデビン・フィンザーとアレックス・アタラ(1397位)も番付に初登場している。暗号資産やブロックチェーン関連のビジネスは、引き続き、資産を増やしていきそうだ。

また、中国のIT企業の経営者も躍進している。香港在住で人工知能による画像認識技術のビジネスを展開するセンスタム創業者の湯暁鴎(Tang Xiaoou)も、今回ビリオネアに名を連ねた。純資産推定は約57億ドル。中国では政府の厳しい規制がIT企業への打撃となっているが、その中でもテック系企業は業績を伸ばしている。AIやロボットの分野では中国の技術は抜きんでており、日本のAI・ロボットベンチャーも、技術開発は中国企業に依頼していることが多い。今回、新たにランキングに入った中国の“長者”の三分の一はIT企業関連の人物といわれている。長者番付の人数もアメリカに次ぐ世界第2位となっている。