日銀が目指していたインフレターゲットが、いよいよ実現する見通しです。5月7日付の日本経済新聞朝刊には、「インフレ率、10月ピーク2.2% 民間予想」の見出しが掲載されました。

90年代後半からデフレ経済に苦しんできた過去

2013年からアベノミクスと称した経済政策のもと、日銀は消費者物価指数が年2%ずつ上昇することを目標に掲げ、量的・質的金融緩和政策を実施してきました。簡単に言えば、市中に流通するお金の量を大きく増やしたのです。なぜインフレ目標を掲げたのかについては、平成を通じて日本経済が陥ったデフレ経済からの脱却を目指したからです。

デフレ経済の問題点は、経済がスパイラル的に縮小へと向かう恐れがあることです。物価が下落すれば、企業は製品・サービスの価格を引き下げるので、利益幅が無くなっていきます。結果、企業はコストを削減するため、従業員の賃金を抑制します。すると個人消費が冷え込むため、企業は製品・サービス価格を一段と下げざるを得ず、それが従業員の賃金引き下げを招き……、というように、どんどん物価が下落しながら、経済活動が停滞してしまいます。1990年代後半から、日本経済はデフレ経済に苦しんできました。

2013年以降、日銀はさまざまな形で金融市場に資金を供給し続けてきました。世の中に出回るお金の量が増えれば、預貯金から投資に資金が回るようになります。あるいは個人消費も活性化されます。こうして徐々に景気が回復し、将来に対する期待から企業の設備投資や個人消費が盛り上がれば、モノやサービスへの需要が高まり、やがてデフレからインフレへと転換する、はずでした。

しかし、このようなシナリオ通りには動かず、なかなか物価は上昇しませんでした。それが昨年秋口から「生鮮食品を除く総合」の前年同月比がプラスに転じ、上昇ペースを上げてきました。ちなみに2022年3月のそれは0.8%のプラスでした。
さらに、4月中旬時点の東京都区部の消費者物価指数上昇率が、前年同月比で1.9%と7年ぶりの水準になったことで、いよいよ日本でもインフレが到来しつつあると見られています。