電子コミックはユーザーにとって課金のハードルが低い

電子コミックは漫画アプリなどの専用アプリで読ませるもののほか、Kindleなどでダウンロード販売するもの、オンライン上でレンタルさせるもの、動画配信のサブスクリプションの中で購入をさせるものなど、いくつかの形態がある。

最初は出版社以外の会社が、版元の漫画コンテンツの版権許可をとり、ブラウザ上や自社の独自ビューワーで読ませるものが主流だった。どちらかというと、漫画雑誌を発行している出版社は、既存の売り上げの損失につながるという危惧もあり、自社サイトでは積極的に作品の公開をしていなかったような印象がある。読ませても最初の1~2話あるいは最新話のみで、その流れで単行本購入に誘導するやり方をしているサイトが多かったと思う。

だが、最近では講談社や集英社などの大手出版社が、自分たちで自社サイトや自社アプリを立ち上げ、積極的にキャンペーンを打っている。版元が無料試し読みや、アプリのPRを行っている効果は高く、「公式がやっているのなら」ということで、電子コミック全体のイメージも変わってくる。公式のみならず、各アプリが創意工夫を行っており、初期よりインターフェースも格段に使いやすくなった。

また、電子コミック発のヒットも生まれている。劇場版もつくられたドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京)はWebコミック誌での連載が原作。高橋ひかるが主演を務めるドラマ『村井の恋』(TBS)も、LINEの無料漫画が原作だ。もはやドラマ化・映画化される漫画の原作が、電子発のことは珍しくない。

さらに、漫画アプリでは100円~200円で1話あるいは数話ずつを切り売りしているところも多く、これくらいの出費であれば、ユーザーの負担感も少ない。単行本を購入するまでもない「ちょっと読みたい」ユーザーもかなりいるであろうし、漫画誌を買ってくれないこういった層を取り込めることは業界にとってかなり大きい。

電子化ゆえの「だらだら課金」には要注意

一方で、「だらだら課金してしまう」「やめられない」というユーザー側の悩みも、電子コミック特有のものとして浮かびあがってきている。安価で売り切りであるがゆえに、質の低い作品が乱立している面もあり、広告などの誘導でそういった作品に浪費してしまう人も少なくない。

書店で本当に気に入った作品を手に取っていた時代と違い、1クリックで衝動買いしてしまえるので、消費者側には自制心も必要となってくる。スマホに入れるアプリを厳選する、決まった作品にしか課金しない、閲覧する時間を決めるなど、自分ルールを作って上手に付き合っていきたい。

業界全体が様々な工夫をすることで、大いに盛り上がっているコミック市場。電子化のブームは良質な作品に出会うチャンスでもあるので、ユーザー側も見極める目を持ち、ひとつひとつのコンテンツに納得してお金を払っていくことが大事だ。