2、3年前から業界関係者には囁かれていた「電子が紙を抜く」日

Finaseeの過去の記事(『鬼滅の刃』がなければ出版業界は死んでいた? 「電子化」も大きなカギに)でも取り上げているが、コミック市場は2020年に過去最高の販売額6126億円を記録、さらに21年の推定額は6759億円とされている。これは、『少年ジャンプ』が歴代最高の発行部数を記録し、「コミック全盛期」と言われた1994~95年よりも大きな数字だ。

一時期、漫画雑誌は低迷を続け、廃刊に追い込まれる雑誌もあったほどだが、近年スマホの普及で漫画の電子化が進み、若年層を含む幅広い層が漫画を再び読み始めたことが勝因であるように思う。現に前述の6759億円のうち、4114億円は電子コミックの売り上げだ。

電子コミックに関連する企画記事・インタビューなどを執筆しているライターのA氏は「電子コミックが、雑誌を含めた紙のコミックの売上を抜いたのは2019年ですが、そのしばらく前から『もう紙を抜くよね』とは言われてたんです。コロナ禍の巣ごもり需要で状況はさらに加速していて、今はコミック分野だと電子版が紙のほぼ2倍の売り上げを出しています。もはや大手版元にとっても電子コミックは収益の柱として欠かせなくなり、Webの無料試し読みキャンペーンなどにかなりの予算をかけることも当たり前になっています」と語る。

A氏の所属する編集プロダクションでは、もともとゲームやアニメ関連の記事を得意としていたが、最近では社内でも電子コミック関連の紹介記事を担当する人間が増えてきているそうだ。

この流れは、出版社の売り上げ全体にも影響している。『進撃の巨人』や『東京卍リベンジャーズ』などの人気漫画を発行する講談社では、2020年12月から21年11月までの決算で、ついに電子書籍が紙の出版物の売り上げを抜いた。もちろん、この中には漫画以外の一般書籍も含まれるが、電子コミックが好調だったことが要因としては大きいという。