4月の米国株マーケットも目まぐるしい変化を続けました。通常、米国株の季節性アノマリーに従えば4月は上昇相場となる強気の月です。定石通りの展開であれば4月中旬の税金納付時期を終えると上昇相場となるケースが多く、筆者自身もこうした展開を予想していました。

ところが、今年は5月3~4日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)で、通常の利上げ0.25%よりも厳しい0.5%が検討される旨をFRBパウエル議長が言及したことでマーケットに対する警戒感が一気に高まりました。3月にリセッション(景気後退)のシグナルである「逆イールド※」が発生していたこともあり、投資家の売りをいっそう意識させました。

※詳細は2022年4月公開の「米国株マーケットの見通し―短期的には強気でも“リセッション”をどう織り込むかに注目」をご参照

さらに、4月20日にネットフリックスの四半期契約者数が約10年ぶりに減少し、ネットフリックスの株価が約30%急落しました。これに連動して、動画配信サービスを手がけるアマゾンなどの株価も下落しています。

またテスラのイーロン・マスクがツイッターの買収に意欲的な姿勢を見せたことで、ツイッターの株価は上昇したものの、買収が成立した場合にはイーロン・マスク自身の自己資金とテスラ株が担保となる借り入れが発生するため、テスラ株が売られる懸念があることも投資家心理の売りを刺激しました。なお、このツイッター買収については、4月26日、ツイッターが買収受け入れに合意する旨を発表し、年内中にツイッターは非公開化されてイーロン・マスクの会社となる“サプライズ”が実現することとなりました。

これらの要因が絡み合うことでマーケットが低調なフォーマンスとなり、4月の米国株マーケットは、例年に比べ“予想外”の1ヶ月となったのです。

そんな4月のダウ平均株価、S&P500、ナスダックの動きを振り返ります。

4月のダウ平均株価

ダウは米国主要業種を代表する30銘柄で構成された指数です。

構成銘柄の中ではハイテク株が軒並み低調であったのに対して、バリュー株に投資家の資金が集まりました。その中でもジョンソン・エンド・ジョンソンやコカ・コーラが新高値を更新し、その他にもプロクター・アンド・ギャンブルなどの消費循環株がリスクヘッジ銘柄として買われました。

・ダウ平均株価  32977.21ドル(4月29日時点)

4月のS&P500

S&P500は米国の証券取引所に上場する企業の中で代表的な500社を組み入れて構成された株価指数です。米国経済の現在地を最も正確に表した数字といえるでしょう。

ダウ平均と同じくS&P500も低調でしたが、ヘルスケア銘柄や消費循環銘柄は好調でした。その他にはデルタ航空などの航空関連銘柄も上昇しています。株価の動きからも米国の旅行需要がコロナ禍から力強く回復していることと、FRBの利上げ加速を市場が織り込みつつあるように見えます。こうした要因からセクター別にパフォーマンスが著しく異なる強弱混在の相場展開となり、指数のパフォーマンスとしては上昇しにくい時期が続いたと言えるでしょう。

・S&P500 4131.93ポイント(4月29日時点)

4月のナスダック

ナスダックは主にハイテクセクターやネット企業の動向を知る重要な指標です。GAFAMを中心に米国経済を牽引するテクノロジー企業が組み入れられています。

前述したようにネットフリックスの急落が要因となって、主にグロース株を売却してキャッシュポジションを多くする投資家が増加しました。またエヌビディアが急落したこともナスダック指数に影響を与えました。エヌビディアの株価下落の理由は、GPUと呼ばれるゲームなどの画像処理に使われるプロセッサの価格が急落したことが要因です。消費者にとっては買いやすくなる一方で企業にとっては利益を圧迫する要因となります。これによりエヌビディア株の売りが先行しました。

・ナスダック 12334.64ポイント(4月29日時点)