バリュー株にとって大事なインフレとの関係性

残念ながら、現時点でもこれらの問題の多くは残っています。しかし、インフレ率が上昇する局面に入れば、バリュー株の上昇を阻むこれらの要因が軽減され、平均回帰が起こる可能性があると考えています。なぜならば、インフレ率とバリュー株のパフォーマンスの間には長期的に強い正の相関関係があるため、構造的なインフレ率の上昇は、バリュー株を長期的に支える重要な柱となり得ると見ています。

実際、過去5年間のインフレ期待とバリュー株のパフォーマンスの関連性を見てみると、欧州では非常に高いことが確認されました。一方、米国ではグロース株の優位性が欧州よりも顕著になっているため、それほど大きな関連性は見られませんでした。しかし、転換点ではその傾向が顕著に現れています。

このようにバリュー株とインフレにはそれなりの関係性はあるようですが、大事な点は投資家がバリュー株に投資する際に、インフレに対する国や中央銀行の政策を通じた間接的な影響ではなく、インフレがもたらす直接的な影響を理解することです。過去の事例では、コモディティ株や資本財・サービス株などの非金融銘柄において、バリュー株はインフレと直接的な関係にあることが示されています。

一方、銀行等の金融銘柄は利回り曲線(イールドカーブ)の傾きの変化に比較的敏感に反応しがちです。そのため、今回のサイクルでも利回り曲線の傾きが急に(短期金利<長期金利)ならなければ、インフレが高まったとしても、金融銘柄への配分は抑えたほうが良いでしょう。結局、典型的なバリュー銘柄だからといって、インフレが起こったらすべてチャンスになるということではないのです。