今後、購入時手数料は廃止に進む可能性も

購入時手数料には他にも合理的な説明が付かない問題点があります。

たとえば購入時手数料が購入金額に対して3%の投資信託があるとしましょう。Aさんはお金持ちなので、この投資信託を1000万円分購入しました。一方、Bさんは投資初心者なので、慎重に50万円分だけ買ったとします。この場合、両者が支払った購入時手数料は、Aさんが30万円、Bさんが1万5000円になります。

恐らく販売金融機関からすれば、Aさんに対して提供する役務も、Bさんに対して提供する役務も、大差はないはずです。だとしたら、これは大いに問題でしょう。同じ役務しか提供されないのに、AさんとBさんが支払う購入時手数料には20倍もの差があるのですから。

このように突き詰めて考えていくと、販売金融機関の販売員が「もらって当たり前」と思っている購入時手数料には、合理的な説明がつかない問題点が隠されているのです。最近、信託報酬率については「一物多価」がよく指摘されるようになりましたが、次に問題になるのは、購入時手数料の一物多価でしょう。

そして最終的に、購入時手数料は廃止されるのではないかと思います。かつて、投資信託の回転売買問題が話題になりましたが、この問題も購入時手数料を稼ぎたいがために販売金融機関が行ったことです。購入時手数料が廃止されれば、販売金融機関にとって投資信託の回転売買を行うインセンティブが無くなります。

それには購入時手数料を廃止して、販売金融機関は信託報酬に含まれる「代行手数料」のみを受け取るようにします。それは販売金融機関の収益構造が、少なくとも投資信託ビジネスに関しては、売買手数料を軸としたのコミッションビジネスから、顧客の預り資産に対して一定手数料を目的としたフィービジネスへと転換することを意味します。

コミッションビジネスとフィービジネスのどちらが、より顧客本位かについては、欧米の金融商品販売業界でも議論の最中のようですが、流れはフィービジネスへと向かっています。その意味でも、投資信託の購入時手数料をどうするのかは要注目です。