日本国内の投信残高に占める外貨建て資産の割合が増加を続ける中、年初から続く米国株式市場の調整と、足元のロシアとウクライナの情勢悪化による市場の不安定化が日本の個人投資家にもたらしている影響は決して小さくない。

少々乱暴な表現をお許しいただけるなら、右肩上がりの上昇相場しか経験していない「若葉マーク」付きの投資家にとって、足元の状況は投資信託をはじめとする金融商品が内包するリスクをさまざまな角度から認識する、よいきっかけになっているのではないだろうか。それだけ昨年の米国株市場の投資熱は、円安進行も相まって日本の投資家のリスク感覚を麻痺させたと言えよう。

顕在化した「持続可能性」という新たなリスク

投資信託に関連するリスクを投資家に周知する方法は、時代の移り変わりとともに業界全体でも試行錯誤を重ねてきた。現在は交付目論見書に「基準価額の変動要因」として、価格変動リスク、株価変動リスク、金利変動リスク、為替変動リスク、流動性リスク、信用リスク、カントリーリスクなど、基準価額に影響を及ぼしうるリスクを項目別に記載する形式に落ち着いている。また、今も一定の人気を誇る毎月分配型や、近年ネット界隈で人気が上昇したレバレッジ型については、別途商品の特性に合わせたリスク文言が記載されている。

しかしながら、これらの文言が半ば定型化していることは否定できず、あまねく投資家が自己完結できる内容になっているかについては疑問が残る。何より筆者は、リスクを「基準価額の変動要因」という二次元的な軸で一括りにしていることが、もはや時代に合っていないと感じる。表面的な基準価額の値動きだけでは分からない潜在リスクのほうが、結果的に投資家に与えるインパクトは大きいためだ。

また、積立投資が市民権を得た今、長期にわたる資産形成を目的とした投資家にとっては特に、投資信託の「持続可能性」のほうが重要ではないだろうか。具体的には、毎月(または投資家が指定した購入タイミングにおいて)問題なく投資信託を買い付けられるか、10年単位でその投資信託を保有し続けることができるか、といった点である。これは投資先市場の流動性のほか、投資信託そのものの適正規模(キャパシティ)といった潜在リスクに因るところも大きく、少なくとも基準価額の高低だけで結論づけることはできない。