自動車メーカーが脱炭素のペースメーカーになり得るか

特に自動車業界がフォーカスされることが多いが、脱炭素化は社会全体の流れだ。その中で世界規模でESG(環境・社会・企業統治)投資が盛り上がりを見せている。主要国・地域の資産運用会社などで構成する世界持続的投資連合(GSIA)によると、20年の世界のESG投資額は35.3兆ドル(約3900兆円)だった。それと比例するように、資金使途を環境や社会関連の事業に絞るESG債を発行する企業が増えている。

NTTが10月に発行した総額3000億円のグリーンボンド(環境債)は事業会社による一度の発行額としては、最大とみられている。5G関連や再生可能エネルギープロジェクトなど充てる計画だ。トヨタも21年3月に、安全技術やEVの開発向けなどにサステナビリティ債を円建てで計1300億円、ドル建てで27億5000万ドル起債するなど、大型発行が市場を盛り上げた。特にグローバル企業にとって脱炭素化へ向けた取り組みが至上命題となっており、ESG債をうまく活用できるかが、企業の持続可能な経営をしていくためにも重要なポイントとなってくるだろう。

21年にトヨタ・日産・ホンダの電動化戦略が大幅にアップグレードされた。22年はトヨタがEV専用に開発したプラットフォームを初採用したEV「bZ4X」が発売されるなど、各社の電動化戦略が計画から実行に移される元年と位置づけられる言っても過言はないだろう。その先には各社が一つのターニングポイントとする30年に向けて、適切な資金調達・技術開発を進め、スピーディーな新型車の市場投入が求められる。それを企業として最も重要な収益体質を維持していきながら事業運営を進めていかなければいけない。脱炭素化は先に述べたように、自動車業界だけの話ではない。トヨタを筆頭にグローバルで競争力を維持しながら戦ってきた自動車メーカーがEVでも勝ち続け、脱炭素化社会のペースメーカーとなれるのか、自動車業界だけではなく日本の産業界全体が見守っている。

執筆/鎌田 正雄
合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた