日本の主要自動車メーカーが、この一年で電動化戦略を刷新しEV戦略を加速させている。トヨタ自動車は2021年12月に30年の電気自動車(EV)の販売台数を350万台、EVに4兆円(電池投資は2兆円)を投資する計画を発表。日産自動車も21年11月に今後5年で電動車全体で約2兆円を投資し、30年度までに15車種のEVを投入する。すでに40年の新車販売をEVとFCVのみにすると発表しているホンダも含めて各メーカーの“本気”の電動化戦略がこの一年で出そろった。さらに3月4日にはホンダとソニーグループがEVで連携するという衝撃的なニュースが発表された。EV化に後ろ向きとも言われることもあった日本メーカーが脱炭素化のペースメーカーとなるべく、アクセル全開で走り出した。

トヨタは30種投入へ、日産はルノー・三菱自とのアライアンスを深化

「EVに前向きではないという評価に対して、(今回発表した30年EV目標の)350万台、30車種投入で、これでも前向きではない会社と言われるならば、どうすれば前向きな会社と評価をもらえるのか教えてほしい」。21年12月に行われたバッテリーEV戦略に関する説明会で、環境団体がトヨタを気候対策ランキングで最下位にしたことに対しての質問に豊田章男社長が答えた一コマだ。

この発表前まではEV専業化を表明する欧州メーカーなどと比べ、トヨタはEV化に対して前向きではないという評価もあった。だが、今回の発表は業界関係者に予想以上の驚きを与えた。まず、21年5月の発表時はEVと燃料電池車(FCV)を合わせた30年販売目標を200万台としていたが、EVだけで350万台と目標を大幅に上方修正。投資関連では、30年までに電動化に8兆円を投資をする。うちEVに4兆円を投資をするとし、従来計画で1兆5000億円規模だった電池投資額を2兆円に引き上げた。EV車種は同年までに30車種を投入する。また同社の高級車ブランド「レクサス」は、30年までに欧州・北米・中国においてEV専業とし、グローバルで100万台の販売を目指し、35年にはグローバルでEV専業になるとの目標を見据える。

日産も環境対応を急ぎ、電動化戦略を加速する。日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は2月に「欧州では、ユーロ7 の規制が導入されたら、新たなガソリン車の投入をやめる」との方針を明らかにした。その理由を「ガソリン車がCO2規制をクリアするために必要な技術や貴金属のコストを勘案すると、総保有コストの観点から電動車の競争力がガソリン車を上回ると考えている」と説明。25年に導入が予定されている排ガス規制「ユーロ7」は現行の「ユーロ6」から有害物質の規制対象が追加されるなどエンジン車にはさらに厳しい規制となると言われている。

21年11月に長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、今後5年間で約2兆円の電動化関連の投資をする。30年度までにはEVを15車種を投入し、次世代電池と期待される全個体電池を28年度に市場投入する。

日産の電動化戦略を語る上で外せないのは、ルノーと三菱自動車とのアライアンスの動向だ。1月にアライアンス3社は共同で会見を開き、30年度までに電池の生産能力を現在の20倍に高めると発表。今後5年で電動車の開発に3社合計で230億ユーロ(約3兆円)を投資し、30年までに5つのEV専用プラットフォーム(車台)をベースに35車種の新型EVを投入する。さらにEV販売価格のカギを握るバッテリーコストを2026年には50%、2028年には65%削減することを目指す。全個体電池は日産が技術開発をリードして、エンジン車同様のコストを実現することを目指すとするアグレッシブな発表となった。