EV転換に研究開発・生産に巨額の投資資金が必要に

なぜそこまでEV化を鮮明にするのかは周知のように、世界的な脱炭素化の流れがある。国内では20年10月に当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことをきっかけにEV化への動きが活発になった。エネルギー問題などの課題も多いが宣言から1年以上が経ち、自動車メーカー各社の“本気”の電動化戦略が出そろい、今後は本格的な実行フェーズに入っていく。

そこでまず障害となるのが電池を含めた開発や生産に必要な巨額の資金の問題だ。一説によるとEV1車種の開発には500億円規模の資金が必要とされ、既存の生産ラインをEV用に転換するには1工場あたり100-150億円かかると言われている。さらに電池を自社で生産するのであれば、別に資金が必要になる。先に述べたようにトヨタは30年までにEV事業に4兆円(電池投資は2兆円)、日産は今後5年間で電動化に約2兆円の投資を行う。ホンダは21年から6年間でEV以外も含めて5兆円の研究開発費を投入する。1月には中国の湖北省武漢市の合弁会社「東風ホンダ」に電気自動車(EV)の生産ラインを新設すると発表し、その投資額は700億円としている。

もちろん、各メーカーとも今まで手をこまねいていたわけではない。トヨタはEV開発部を92年に設置し、96年には「RAV4 EV」を市場投入している。電池開発においても内製で研究開発と生産を行ってきた。97年には世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を世に出している。

日産も10年に量産EV「リーフ」を世界に先駆けて市場投入してきたように電動化技術でも日本メーカーは強い。ただ、グローバルな主戦場は日本メーカーが最も得意としてきたエンジン車(内燃機関)ではなく電動車へ移行しているのは確かだ。EVになると部品点数が減り、エンジン車と比べて参入障壁が低いことから新興メーカーも含めた新たなライバルとも戦っていかなければならない。