損失があるなら確定申告をしたほうが有利な場合も

源泉徴収ありの特定口座は原則として確定申告が不要だが、以下の場合などは申告したほうが有利なケースもある。主に以下の2パターンだ。

(1)複数口座を持っていて、どれかに損失が出ている場合
(2)利益が20万円以下の場合

まず、(1)について。もし複数の口座での取引があり、片方で損失が出ているなら、確定申告を行うと税金が戻ってくる可能性が高い。

税計算では利益と損失を相殺できるという考えがある。たとえば証券会社Aでプラス50万円の利益、証券会社Bでマイナス50万円の損失が出ていた場合、確定申告の際に両者を合算することでその年の利益を0円とすることができるのだ。これを『損益通算』という。

源泉徴収ありの特定口座だと、証券会社Aで50万円の利益が出たタイミングで本来納めなくてよい税金が天引きされてしまう。納め過ぎた税金は確定申告をすることで還付を受けられるため、損益通算ができる場合は申告を検討しよう。

次に(2)について。これは一般的に『20万円ルール』と呼ばれている制度で、

・1ヵ所から給与を受けている給与所得者
・年間の給与収入金額が2000万円以下
・株式投資などで得た利益が年間合計20万円以下

といった条件を満たす人は確定申告が不要となり、株式投資で得た20万円以下の利益も課税対象にならない。

しかし、源泉徴収ありの特定口座では(1)のケース同様、本来納税の義務が発生しない利益に対しても源泉徴収が行われるため、1年間の損益を合計して利益が20万円以下だった場合、税金を多く納めていることになる。こちらも確定申告を行うことで、納めた税金の還付を受けることが可能だ。

なお、利益が20万円以下の場合に免除されるのは所得税の確定申告のみ。別途、住民税の申告が必要となることには注意したい。冒頭でも説明した通り、投資の利益には所得税と住民税がそれぞれ課税される。所得税の管轄は税務署、住民税は各市町村が管理する。

通常、所得税の確定申告を税務署に対して行うと、税務署が各市町村へ申告内容を通知する。確定申告を行わない場合は各市町村へ所得の情報が届かないため、自身で申告する必要があるのだ。

申告漏れがあると延滞税などのペナルティが課される場合もあるので、所得税の確定申告免除を利用する際はとくに注意しよう。