インフレの抑制のために預金封鎖

そこで、政府はインフレを抑えるために、預金封鎖を実行することにしました。2月16日に新円への切り替えを発表し、翌17日から預金封鎖が実施されたのです。

この政策の内容は、

1.2月17日以降、全金融機関の預貯金を封鎖

2.流通している10円以上の紙幣(旧円)を3月2日限りで無効とする(2月22日に5円券追加)

3.3月7日までに旧円を強制的に預け入れさせ、既存の預金とともに封鎖。新円を2月25日から発行し、一定限度内に限って旧円との引き換えおよび新円の引き出しを認める

というものでした。

出所:日本銀行 新円切り替えと証紙貼付銀行券

この政策では、預金封鎖と併せて「財産税」が課されました。課税対象には、預金だけでなく不動産も含まれました。財産税の税率は資産額に応じた累進税率で、最高90%という過酷なものだったのです。

預金封鎖と財産税によって流通するお金の量が減り、インフレは収束していきました。さらに、財産税の税収により、国の債務も減少しました。

インフレが抑制されて国の財政も改善されたとはいえ、それは多くの国民の犠牲のたまものです。このような悲劇が二度と繰り返されないことを願うばかりです。

今後の日本に預金封鎖が起きる可能性は?

現在の日本の状況と当時の状況を比べると、似ている点がいくつかあります。そのため、近い将来に預金封鎖が起こるのではないかと危惧する声も聞かれます。

最大の問題は国の債務で、預金封鎖が行われたときと同様にGDPの2倍以上です。コロナ対策の支出増加により財政はますます悪化しています。また、小泉改革以降格差が広がり、一部の富裕層に富が集中しているのも共通点です。

このような状況で、来年新紙幣が発行されることが決まっています。新円切り替えと違い、新しい紙幣が発行されても旧紙幣が使用できなくなるわけではありません。しかし、日本の危機的な財政状況の中での新紙幣発行は、預金封鎖の前兆のように感じる人もいるようです。

国の債務は簡単に解消できるレベルではありません。預金封鎖ではないとしても、国民に痛みを伴う政策が行われる可能性は高いのではないでしょうか。