「うちは公立コースだから安心」は通用しない地域も

一方で、「うちは大学まですべて国公立に行かせるから安心」と考える人も多いかもしれない。私立中高一貫校に比べると、確かに公立中高の学費は中学で約三分の一、高校で約二分の一と格段に安い。高校受験のための塾代を考えたとしても、私立中受験をするのとは比べ物にならない。そこへ国公立大学の学費約240万円を加算しても、想定内だと楽観的に考える家庭もあるだろう。
※2021年11月現在。文部科学省が定めた授業料・入学料の標準額から計算

だが、それも上手くいくとは限らない。なぜなら、現実には難関国公立大学の合格者には、私立中高一貫校出身者が少なくないからだ。中堅以下の国公立大をめざす場合も、地域によっては「すべて公立コース」が難しい場合がある。

例えば東京都。都立高校の受験には当日の試験結果に中学での成績(内申)が加算され、試験7割、内申3割でジャッジされる。国公立大学に現役で入学できるレベルの都立高校に入るためには、あらかじめ高い内申点をもって試験に挑む必要がある。前述の『二月の勝者』の原作漫画の中でも、子どもに中学受験をさせる目的の1つは「高校受験回避」だと保護者が語るシーンが出てくる。テストの点が高くても、中学の先生と相性が悪く内申が低ければ、国公立大に入学できるレベルの都立高校に入るのは難しいかもしれない。

その点、私立中高一貫校では前倒しで大学受験対策をしており、いわゆる中堅校でも大学進学実績で健闘している。また、伝統ある私立校では、国公立大や有名私大の推薦枠を一定数確保していることが多い。そのため、首都圏では多少無理しても私立中学を受験するという家庭が増え、年々志願者が増えているというのが現状だ。

東京都はある意味例外的なので、これが全国的な傾向とはいえないが、いずれにしても教育にかかる費用は、その時の政策や地域の状況によっても変化するため、幅を持って設定しておく必要がある。

教育費は予測可能な出費。時間を味方につけたマネープランを

厳しい話ばかり続いてしまったが、教育費の最大の特徴は「使う時期が決まっている」こと。子どもが生まれたら受験までの年月を逆算し、早めにマネープランを立てておけば、その時の教育事情や子どもの状況に合わせた柔軟な対応ができる。

幸い、日本の初等教育は諸外国に比べても質が高い。小学校まではお金のかからない公立で過ごし、その間にしっかりと教育資金を貯めておくことができる。預金や学資保険はもちろん、複利で運用する投資信託の積み立てなども検討し、しっかりと資産形成を行っていけば、いざという時にあわてずに済むのではないだろうか。