iDeCo+のけん引役は中小企業の経営者

2022年の年金改正は、公的年金と私的年金である確定拠出年金がセットで変更される点がこれまでと大きく変わる点です。公的年金の受給開始年齢は、60歳から75歳までの間で自由に選べるようになります。公的年金は受給開始年齢を遅らせれば遅らせた分だけ、受給額が増えますから、長生きに備え「繰下げ」を検討する方は増えるでしょう。

すると、公的年金を受け取るまでの間、働くことと同時にお金をいかに工面するかを考えなければならなくなります。そこで確定拠出年金は、加入資格年齢を65歳まで拡大したり、受取開始時期も75歳まで拡大されたりと、老後の暮らしをより豊かにするための選択肢が広がります。そして資産形成にさらに加速がつくようにと、企業型確定拠出年金に加えて個人型確定拠出年金も併用加入ができるようになります。

そして忘れてはいけないのが、中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)です。2020年に対象事業所が、従業員100人以下から300人以下に拡大し、より多くの会社が導入できるようになりました。会社が拠出する掛金は給料同様全額損金計上されますが、給料と異なり、法定福利費の対象となりません。会社が負担する社会保険料は約15%ですから、同じように従業員の生活を守るための資金であれば、老後資金として確定拠出年金の掛金を選ぶ理由も大きいと考えます。さらに企業型確定拠出年金のような費用負担などがかからないので、これまで従業員への退職金や福利厚生までなかなか手が回らなかったという企業も検討しやすいと思います。

iDeCo+は、iDeCoを始めている従業員にとって、会社が老後の掛金を「プラス」して出してくれるのですから、嬉しいボーナスそのものです。もしiDeCoをやっている同僚が、会社から特別ボーナスをもらっていると知ったら他の従業員はどう思うでしょう? これはうかうかできないと、口コミ効果でiDeCo加入者が増えるのではないでしょうか?

確定拠出年金誕生から20年、嫌われ者だった制度が、いつのまにか人気者になり、これからますます多くの方に活用され人生100年を支える重要な役割を担っていくことでしょう。