年金は「もらうもの」ではなく、「創るもの」

2019年の金融庁レポートを発端とした「年金2000万円問題」は、幸か不幸か日本人の意識を大きく変えるきっかけとなったようです。それまで年金不安は国の責任だと、どこか他人事だったのが「自分の老後のお金」を真剣に意識するようになったのです。

筆者もたくさんの講演会に呼んでいただきました。最初は自分たちを不安にさせているのは誰なのか、犯人捜しをしたいといったムードがあるのですが、年金制度の変更はだれが悪いのでもなく、私たちが長生きになったためなのだと解説すると、空気が一変したものです。年金制度が始まった頃の定年は55歳、男性の平均寿命は60代半ばです。そして年金の支給開始は60歳でしたから、なにをかいわんやです。

一般的に年金は「もらう」と表現することが多いですが、年金は「創る」ものです。より長い期間保険料を納めると、より多くの年金が創れます。収入が多くなるほど支払う保険料は高くなりますが、それに応じて年金額も高くなります。国からもらうのではなく、自らが現役時代に「創った」年金を高齢期の自分が受け取る仕組みなのです。

仮に20歳から60歳までの40年間を「現役時代=年金を創る時代」とすれば、60歳から100歳までの40年間は年金を受け取る時代です。個人とすれば分かりやすいことも、国全体でそれを支えるには年金制度の調整が必要です。結果として、老後のお金は公的年金と自分年金の両輪で「自らが創る」という意識改革が求められます。

確定拠出年金は2017年の改正で、日本に住む年金加入者はほぼ例外なく加入資格を有するようになり、一気に加入者が増えました。やっと主体的に長い人生と向かい合い、人生設計をする人が増えだしたのではないかと筆者は考えています。