今回は、「3つの自給率」にまつわる3問のクイズによって、みなさんの「現状認識力」を確認していただきたいと思います。

1.食料自給率

農水省は8月25日に2020年度の食料自給率がカロリーベースで37%と発表しました。1993年度や2018年度に並び過去最低となっています。1965年度の統計開始時はカロリーベースで73%でしたが、お米の消費減退などもあり、長期に渡って低下傾向にあります。

つまり日本人は食料の63%を輸入に頼っているんですね。

過去20年間、私はセミナーや講演会で日本の「3つの自給率」に必ず触れるようにしてきました。自国の状況について正確に把握している方の割合が大変少ないからです。

それでは早速、問題です。

問1.令和元年度における、東京都と北海道の食料自給率はそれぞれ何%でしょうか?

●A 東京都の食料自給率は何%?
1.​0%
2.​5%
3.​10%
4.​20%

●B 北海道の食料自給率は何%?
1.70%
2.100%
3.150%
4.200%以上

セミナーや講演会において東京都と北海道の食料自給率を配布資料に書き込んでいただくのですが、ご自分が書かれた数字と正解のギャップに大変驚かれる方が多いのが現状です。

東京都の食料自給率は、平成30年までは1%でしたが、令和元年から遂に0%となっています(問1-Aの正解は1番)。

ちなみに、大阪府が1%、神奈川県が2%です。つまり、東京都民1400万人の朝昼晩の食事は、他の道府県や外国からの輸入にほぼ全量を頼っているということを意味します。

1400万人の食生活は、大地震や地政学リスク等、何か大きな変動があった場合、大変脆弱だと言わざるを得ません。

一方で北海道はどうなのでしょうか?

こちらは、セミナー参加者の多くの方々は70%とか80%とお答えになります。大変失礼ながら、それは自給率の意味を誤解されているのではないでしょうか。

食料自給率100%というのは、ごく大雑把にお伝えしますと、その国・そのエリアで作ったものだけでそのエリアの住民が食べていけるという意味です。

北海道の食料自給率は全国1位の216%となっています(問1-Bの正解は4番)。つまり北海道550万道民は、自分たちが食べていけるだけの2倍強を作って、東京や大阪などに“売ってあげている”のです。

ちなみに、第2位が秋田県の205%、第3位が山形県の145%と、東北エリアの食料自給率が高いんですね。

東京都の食料自給率0%というのは、まさに「飽食の時代」を端的に表すデータではありますが、一方で不測の事態が起こった時には、食料確保が困難になることが予想されるのです。

ここ数年、中国の爆買い・爆食が話題になっています。中国に食料を買い負けるというニュースもよく見かけます。

自給率37%の日本は(東京・大阪を中心に)、何らかの状況変化によって世界的な食料不足になった場合に、大変値段の高くなったものを海外から買わざるを得ません。そしてこのインフレは資産形成にも大きく影響します。なぜなら、インフレ=預貯金の価値が大きく下がるということを意味するからです。

ちなみに海外では、カナダ266%・オーストラリア200%・米国132%が自給率の高いベスト3となっています。

農林水産省HPより

地球温暖化が加速し、カーボンゼロが叫ばれる中、食料安全保障上も「食料自給率の高い国に分散投資を行い不測の事態に備える」ということが必要な時代に入ってしまったのかもしれませんね。