昨年から、つみたてNISA(少額投資非課税制度)の口座数が順調に増えています。金融庁によると、2020年末時点の口座数は302万口座で2019年末の1.6倍に、2020年の買付額は4638億円で2019年の2.3倍になりました。

このようにつみたてNISAはコロナ禍の中で大きく伸びていますが、その理由としては、①つみたてNISAに採用されている商品の手数料が安いことや、②つみたてNISAの投資期間が20年であり、一般NISAの5年と比べて圧倒的に長いこと等に投資家が魅力を感じているのだと思います。特に、②の理由でつみたてNISAを活用している人の中には、「リスクのある資産でも、長期で投資すれば安心」と考えている人も多いでしょう。

でも本当にそうなのでしょうか? 「長期で投資すれば安心」とよく言われますが、何がどう安心なのかを正確に理解している人は多くないと私は思います。そこで、今回は長期投資の何が安心で、どのようなリスクがあるのかを検証したいと思います。

「年率」のリスクは投資期間とともに減少

投資セミナーなどに参加すると、「長期投資をするとリスクが減少する」といった内容を聞くことが多いと思います。実際、この言葉に基づき長期投資をしている人もいるでしょう。まずはこれが本当なのか、検証したいと思います。

ここからは少し難しい話になってしまいますので、計算の部分は読み飛ばしてもらっても構いませんが、前提として株式のリスク(標準偏差)を20%とします。また今年のリターンと翌年のリターンが同じ分布であり、かつそれらの分布が互いに独立(関係性がない)と仮定します。この時、5年間、運用した場合の平均を表す“年率”リスクは20%÷√5=8.9%となります。投資期間が10年ならば、“年率”リスクは同様に6.3%と計算されます。

要は、一定の前提はおいているものの、“年率”で見た場合には、数学的にみて「長期投資をするとリスクが減少する」というのは正しいのです。

でも、“年率”のリスクが下がることは、果たして投資家にとって意味があるのでしょうか? 長期投資をすることを検討している投資家にとって、1年あたりのリスクを表す“年率”はあまり意味があるようには思えません。投資家にとって重要なのは、あくまで5年後の資産額がどのくらい変動するか、つまり“年率”ではなく、 “累積”のリスクであり、この視点で長期投資を再考してみることが必要なのです。