「累積」のリスクは投資期間とともに増加

その“累積”のリスクに焦点を当てると、実は話が違ってきます。結論から言うと、“年率”とは逆に、“累積”では長期投資になればなるほどリスクは上がっていくのです。

先ほどと同様、具体的に計算してみましょう。リターン分布について同様の前提とした場合、5年間運用した際の累積リスクは、20%×√5=の44.7%、10年ならば20%×√10=の63.2%と計算されます。つまり投資期間が長くなるにつれてリスクはどんどん大きくなっていくのです。

「長期投資ではリスクが減る」となんとなく信じていた人には衝撃かもしれません。でも、マーケットの上昇が長期にわたって続いた場合のリターンは非常に大きく、下落が長期にわたって続いた場合には大きなマイナスになり、長期投資になればなるほどその差が拡大していくというこの“累積”の考え方は、投資家のリスクに対するイメージに近いのではないでしょうか。結局、「長期投資だからリスクは下がる」が正しいかどうかは、リスクを“年率”で考えるか“累積”で考えるかによって異なるのです。

このような特性を十分に理解したうえで、投資家を増やしたい人・業者は、リスクの話をあえて“年率”ですることで、長期投資でリスクが減っていくと主張します。一方で、投資家にとってより重要な“累積”のリスクは、長期投資になればなるほど、高まっていくのですが、多くの場合、この点はあまり触れられていないように思います。

この「累積」のリスクの考え方は非常に大事ですので、これを機にしっかりと理解いただければと思います。