ジョージ5世の戴冠記念金貨から学ぶ「高鑑定」金貨の評価方法

さて、それではここで英国の例を取り上げてみたいと思います。

イギリスは1300年代のエドワード3世の時代から本格的に金貨が発行されています。

また1500年代後半のエリザベス女王(1世)あたりからは、明確な肖像が金貨に刻印され始めました。さらに新しく国王が即位する際には記念の金貨が発行されてきました。

1911年にイギリス国王に即位したジョージ5世(現在のエリザベス2世の祖父)の場合も、戴冠記念金貨が発行されています。

ジョージ5世戴冠記念金貨(写真は筆者提供)

それでは、110年前の金貨について、先ほどの11のポイントについて確認してみましょう。

①発行枚数 2812枚

②鑑定枚数 468枚(2021年7月25日現在:PCGS・NGC合計)

③65以上の極めて高いグレードの鑑定枚数 121枚(発行枚数全体の4.3%)

発行枚数2812枚は極めて少なく、かつ今後絶対に増えることはありません。高鑑定枚数は、古い貴族の館などから、たまに保存状態の良い金貨が見つかりますが、それでもほとんど増えないといっても良いのではないでしょうか。

ちなみに、1979年のイラン革命に端を発した第2次オイルショック時の金価格大暴騰によって、世界各国の金貨のうち相当多くが溶解され金地金として売却されたと推測されています(その方が高く売れたため)。

ここで鑑定会社について説明させていただきます。

世界的なコイン鑑定会社にはPCGSとNGCの2社があります。PCGS社は1986年、NGC社は1987年の設立であり、既に鑑定をスタートしてから約35年になります。

鑑定グレードには、1~70まであり、70が最高鑑定となります。鑑定グレードが高くなるほど評価額が上昇します。下記の表は1911年ジョージ5世5ポンド金貨のグレードごとの鑑定枚数を一覧にしたものです。

PCGS社・NGC社合計の鑑定枚数が228+240=468枚
グレード65以上が58+63=121枚

となっているのがお分かりいただけると思います。

1911年 ジョージ5世5ポンド金貨 鑑定枚数表 : PCGS・NGC

 
 

次に④以降のポイントについても確認してみましょう。

④1911年ジョージ5世の戴冠記念金貨となります。

⑤~⑧ジョージ5世の立派な髭が克明に刻まれ、強い国王を印象付ける肖像となっています。裏は定番である邪悪なドラゴンを退治するセント・ジョージのデザインです。

1911年~1936年までイギリスを統治したジョージ5世。戴冠記念金貨・発行枚数が極めて少ない(1986年発行の昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の発行枚数は1000万枚にもなります=希少性が極めて低い)ということもあり大変人気があります。また、ジョージ5世は日本の昭和天皇が皇太子時代に英国で学ばれていたときから大変親しくされており、親日家でもあり、後に日本を訪れた時に横浜で刺青を彫ったと言われています

⑨記念金貨であり、一般には流通していません。きれいなプルーフ(鏡面)仕上げとなっています

⑩しっかりと1911年と刻印されています

⑪重量:39.94g/直径:36.02mm/22金(金含有91.7%)

以上見てきましたように、すべてのポイントが明確になっており、極めて優れた投資対象として考えることができるのです。