Q:職員「支店長! お客さまとの雑談が大切とおっしゃいますが、何を話していいかわかりません。時間もありません!」
A: 支店長「天気の話から入って、そこから話を展開させるといいですよ。時間はそこそで切り上げて…」
森脇's Answer:
この支店長の言うように天気の話題から入るのはいいのですが、雑談が苦手な職員にとってみれば「その話の後こそ、どうすればいいのかわかりません!」となってしまうのではないでしょうか。一方で、お客さまとの会話が弾んで雑談が長くなりすぎるのもまた問題です。一人当たりの接客時間にさほど余裕があるわけでもない中で、こちらが聞きたいこと以外の話題でお客さまのお話しが止まらなくなると、どこで話を切り替えようかと、話の内容に集中もできずにそわそわしてしまうものです。
この連載でも何度も触れていますが、顧客本位の提案にはお客さまの自己開示による精度の高い情報が欠かせません。雑談はそのような情報を得るための有効な方法の一つです。また、情報を得るためにはお客さまの安心や信頼を得ることが重要ですが、その点においても雑談を通してお客さまとの関係性を深めることは意義のあることです。本稿では、そのような顧客本位の営業活動に資する雑談について解説します。
「お手伝いできることはないか」を意識する
実際にどのように会話を展開していけばいいのでしょうか。具体例を見ながら考えてみましょう。
【 失敗例 】
担当者「最近暑くなってきましたね。夏バテは大丈夫ですか?」
お客さま「そうねぇ、最近家庭菜園も大変ですよ。雨が降らないと育成に影響があってね、それに野菜のおいしさも違うのですよ。いろいろとやり方があってね、昨年は……」(野菜についてイキイキと話している)
担当者「家庭菜園いいですね。ところでNISAはどこかでやっていますか?」
お客さま「あ、NISAね。子どもに言われるがまま、他行さんでやっているけど、私はよくわからないんですよ」
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天気の話題から自然にお客さまの関心事を引き出せたのは良かったのですが、話の腰を折ってこちらがしたい話題を唐突に切り出してしまっています。悪い印象ではないにしても、安心感を持っていただくには至らず、断り文句を発されて、これ以上の話ができない状態になっています。
お客さまと雑談をする上で押さえておきたいポイントは主に3つです。
①お客さまに話をしていただく
②こちらの聞きたいことを話していただけるように主導権を持つ
③雑談から得た情報で提案する
まず、相手に話をさせるというのは、接客業の基本です。しかし、多くの担当者は自分が話を展開しようとしてしまいがちです。そうではなく、相手の興味のある話題をふることによって、話をしてもらうことに集中しましょう。入り口はどのような話題でも良いのですが、相手が話し始めたら、その内容に沿ってこちらが聞きたいことに誘導していくのです。
先ほどと同じお客さまを相手に、上手に情報を聞き出している例を見てみましょう。
【成功例 】
お客さま(野菜についてイキイキと話している)
担当者「家庭菜園いいですね。ご家族の皆さんも収穫したてのお野菜が食べられていいですね」
お客さま「娘のところによく持っていくのよ。孫がトウモロコシもトマトも大好きでね。喜んで食べるらしいの」
担当者「娘さんもお喜びでしょうね。お孫さんはおいくつですか? お近くにお住まいなのですか?」
お客さま「5歳と8歳です。娘は忙しいから私が自転車で届けに行くのよ。」
担当者「今はすっかりお野菜も高くなりましたし、お母さまお手製のお野菜は、娘さんも頼もしいでしょうね」
お客さま「本当に物価高ですね。なかなか厳しいものですよ……」
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ここでは、家庭菜園の話から、家族構成や関係性について自然と引き出しつつ、さらにインフレの話へと展開させています。ここからインフレヘッジとしての投資の話に持っていくことはごく自然なことです。お客さまが関心のある話題で会話して好感度も上がっていますし、こちらからの話が会話の流れに沿っていれば安心して聞いてもらえるのです。
その他にも、暑いですねという天候の話から、エアコンそしてエネルギーの話題になり、エネルギー輸入から為替の話にも持って行きやすいです。為替の話になれば円安およびインフレについて、そしてインフレヘッジとしての投資と話を展開できるでしょう。また夏休みの旅行の話が出れば、それがリゾートステイなのかアウトドアレジャーなのか史跡巡りなのか、または外国にいる友人や家族に会いに行くのかなどを聞くことで、お客さまの価値観や交友関係などがわかります。価値観を知れば、効率重視か理念重視かなどの傾向を推測でき、提案のツボを押さえることができます。海外旅行ならばその国の通貨の話は必須で、為替の話題から外国への投資、そしてNISAへと話を持っていくことができるでしょう。
雑談を通してお客さまから引き出したいのは、資産などお金に関することであるのは言うまでもありませんが、その他にも仕事・家族構成・交友関係・趣味・価値観などを聞き出せないかを考えながら会話をしてみましょう。
上記の例では家族構成を聞けていますので、そこからさらに一段と深いヒアリングをした上での提案も検討できるはずです。お客さまからいただいた情報をもとに的確な提案ができれば、それが担当者への信頼につながります。お客さまから信頼を得ることができれば、お客さまはその担当者から「自分のための提案」を受けたいと思い、さらに自己開示をしてくれるようになります。そして、追加で得た情報をもとに、より一層良い提案ができるようになるのです。
大切なことは、私たちが「お手伝いできることはないか」を意識することです。お客さまのことを詳しく知るほど提案の幅は広がります。より良い提案で役に立つことを念頭に置いてお客さまと接してみてください。
支店長自身の「コミュニケーションのノウハウ」を伝えて
お客さまとの雑談の方法に悩む職員は少なくありません。そのような職員には、支店長が日常的に行なっているコミュニケーションのノウハウを伝えてほしいと思います。
支店長は部下と定期的に面談する機会があると思いますが、近年は支店長が一方的に話すのではなく、部下の話を傾聴することに重きを置いている金融機関が多くなっていることと思います。お客さまと話すことと部下と話すことはもちろん同じではありませんが、大事な本音を引き出す基本が傾聴であることは共通しています。支店長に営業経験がなかったとしても、傾聴の実践者としては多くの経験があると思います。そういったノウハウを部下に伝えることが職員のお客さま対応へのヒントやモチベーションにつながるはずです。

