ポッドキャスト番組「投信フリーク」第3回はファンドアナリストの篠田尚子氏と海老澤 界氏が、2026年5月の投信動向から特に注目したいトピックを深掘りトーク。
投信フリーク『#3最近「モメンタムファンド」がじわじわ来ている!? 取り入れる妙味は』から、お二人が「フィジカルAI投資はアリかナシか?」と、「最近じわじわ来ているモメンタムファンドとは」について語った箇所から一部を抜粋してお届けします(収録は6月12日)。
「フィジカルAI」は投資テーマとして成功するか? 絞り込みすぎに潜む盲点
4月28日に新規設定され、資金流入ランキングでも上位に顔を出している「モルガン・スタンレー フィジカルAI株式ファンド」から「フィジカルAI」がまず話題に。
海老澤氏は「技術的な中身はなかなか難しい。頭に浮かぶのはドラえもんくらい(笑)」と冗談を交えつつ、投資テーマとしての見方を篠田氏に問いかけました。
篠田氏は、AIという領域の広さとビジネスとしての不確実性を次のように指摘します。「半導体もAIもそうですが、とにかくテーマとして広いんですよね。結局何がビジネスになって生き残れるかは誰にも分からない状況です。そのため、今はサプライチェーンや業界全体を捉えている銘柄に資金が集中しています。フィジカルAIというテーマ自体は非常に面白いし、私たちの生活にも入ってくるイノベーションだと思いますが、どこが『お金になるか』というビジネスの観点ではまだ見えにくい部分があります。そう考えると、もっと広い『AI』という捉え方でもいいのではないかとも思いますね」(篠田氏)
これに対し、海老澤氏も「フィジカルAI」というワードの話題性や強さを認めつつ、懸念点も示します。
「運用面においてある種の制約になってしまうのではないか――つまり、“フィジカルのAI”というところでかなり狭めてしまうというのがあると思います。また、もう1点は(フィジカルAI銘柄として)選定された企業があるとして、その企業はAI関連事業でほんの少ししか稼いでいない可能性もあるわけですよね。そうなると、(その企業の)他の事業が実は株価に大きな影響を与えていて、『フィジカルAIファンドと言いつつ、何ファンドなのかよく分からなくなる』という事態も起こり得ます。ここは注意が必要だと思います」(海老澤氏)
この話を受けて、篠田氏は「世の中の大きなテーマとして存続することと、投資テーマとして成功するかどうかは別」であると強調。
「フィジカルAIが果たして投資テーマとして成功するかは、極めて未知数な面はまだあると思います。例えば日本株で見ていくと分かりやすいと思いますが、フィジカルAIと、“ど真ん中”の半導体って、(銘柄の顔ぶれが)微妙に違うんですよね。ど真ん中の半導体は日経半導体株指数の代表的な構成銘柄である東京エレクトロンとか信越化学工業などが、おなじみの銘柄ですけれども、フィジカルAIとなったときに結構最初に出てくるのはファナックとか安川電機といった、ロボットの領域で強い企業が出てくるので、“微妙に”半導体のど真ん中とは違う。ですが、どこもNVIDIAと協業していたり、パートナーシップを組んだりしている会社というのは“生成AI関連の会社”になるわけです。NVIDIAって生成AIのある種もうプラットフォーマーみたいな感じですよね。どこも結局協業しているので。そう考えると、投資テーマとして捉える上では、テーマとしてAIや半導体を網羅していて、その中でサブテーマをローテーションさせていくような投資信託でも対応はできるとは思っています。ですからフィジカルAIファンドというのが新しく出てきましたけれども、別に焦らなくてもいいかなと。すでに例えばもう少し広めのテーマでこの領域を捉えているファンドをお持ちの方は、その中できちんとフィジカルAI関連の銘柄が組み入れられる可能性もありますから、様子を見ながらでもいいんじゃないかなとは思いますよね」(篠田氏)と個人投資家へのアドバイスとともにまとめました。
じわじわと人気を上げる「モメンタムファンド」と、現在の市場の“気持ち悪さ”
次なるトピックとして挙がったのが、資金流入ランキングでもじわじわと順位を上げ、人気が高まっている三井住友トラスト・アセットマネジメントの「トレンドランキングシリーズ(SMT モメンタムファンド)」です。篠田氏は「非常に今のマーケットに合っている」と評価します。
「マーケットのモメンタム(相場の勢い、順張り)を捉えながら短期、中期、長期で組み入れ銘柄を調整していくタイプですけれども、まさに今ホットな銘柄がタイムリーに入ってくるので、自分ではその判断ができないという方にはおすすめです。また、モメンタムを捉えようとすると起こりがちなのは、特に日本株、その中でも半導体のような値がさ株は単元で取引しようとすると大変な金額になってしまうこと。しかしモメンタムファンドであれば、そうした銘柄を複数で、いわば“まるっと”投資できるので、ミーハーな方にもぴったり。テーマ投資とはまた違う、ある種トレンドを取りに行く――これも投資のスタイルです。いろいろなマーケットのモメンタムファンドが出ていますけど、面白いと思っています」(篠田氏)とコメント。
一方で、海老澤氏はモメンタムがかつてはアノマリー(一般的な市場理論では説明できないが、経験的に観測できる市場の規則性のこと)とされていたが、CAPM(「市場平均にどれだけ連動するか」を基準とする代表的な理論)の発展により、複数のファクターが付け加えられていく中で、モメンタムもファクターの1つとして認められてきた点を解説。そのうえで、クオンツ運用(数学的モデルや統計学を駆使して、市場を定量的に分析して投資判断すること)が主流となった現在の市場環境に、一石を投じます。
「私自身も篠田さんと同じようにモメンタムファンドは面白いファンドだと思っています。ただ、最近はAIなどを使った運用が主流になり、様々なファクターのアラートを検知して機関投資家が儲けるような、クオンツ的な動きが強まっています。そこで少し引っかかるのは『そうやって形作られるマーケットは、本当のマーケットなのかな』ということです。投資には人間の日常的な気づきや喜び、感情がヒントになる面もあると思うんです」(海老澤氏)
それに対し篠田氏も「クオンツ的な動きで価格形成がなされる今の相場に対し、個人投資家も含めて、市場参加者の誰もがどこか『気持ち悪さ』を感じているのではないでしょうか」とコメント。さらに「足元は期待が先行しすぎて、実態と市場の評価がだいぶ乖離している状況です。ただ、そこを上手く捉えるという発想転換ができる方はモメンタムファンドを見ればいいし、よく分からないという方は無理に見る必要はないと思うんです。もっとご自身で納得感のあるテーマ型やオーソドックスなアクティブファンドなどを見ると良いと思います」と、投資家それぞれのスタンスの重要性を語りました。
――そしてお二人のトークはファンドマネジャーが銘柄選定を行うジャッジメンタルファンドの意義や魅力へと続いていきます。ぜひ全編通してお聴きください。
篠田 尚子氏(楽天証券客員研究員 ファンドアナリスト)
日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。
海老澤 界氏(松井証券 シニアファンドアナリスト)
長年、投資信託について運用、販売、マーケティングなど多面的にウォッチ。投信アワードの企画・選定にもかかわる。

