finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
金融業界人のための「霞が関の歩き方」

【みさき透】役所の資料はこう読め!ファンドラップに「黄色信号」

みさき透
みさき透
2024.10.15
会員限定
【みさき透】役所の資料はこう読め!ファンドラップに「黄色信号」

石破茂政権が船出した。自民党の総裁選期間中は金融課税の強化に言及して市場に波乱をもたらしたが、旧岸田派の支援で総裁選を勝ち抜いたうえ、もとより経済分野には関心が薄いこともあり、資産運用立国プランなどの経済政策は岸田路線を引き継ぐとみられる。

既定路線を推進するかたちになり、金融庁は「仕事が進めやすくなるのでは」(中堅幹部)と期待する向きもある。仕事がやりやすくなる金融庁は何をするのだろうか。ヒントは7月5日に公表された「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」にある。

ただし、よほど気を付けなければ見落としてしまうところに書かれている。この「モニタリング結果」を素直に読むと、当局は外貨建て一時払保険の販売実態に警鐘を鳴らしたと受け取れる。それは正しい理解だが、その先の課題も示されている。それに気が付いた読者は何人いるだろうか。

「真実は細部に宿る」、隠れたメッセージは注記にあり

駆け出しの記者時代、先輩記者に「役所の資料は注記を読め」といわれた。一つは普段からしっかり取材していれば本文に書かれていることは知っていて当然という意味。もう一つの意味は様々な力学から本文には載らなかったが、見過ごすことのできない問題や当局の隠された問題意識などが注記に盛り込まれるケースがあるという教えだ。

実際、役所の担当者が自分で取りまとめた報告書の注記を指し「真実は細部に宿る」と語ったこともあった(報告書の巻末にappendixと称して脈絡のないグラフなどが載っているケースもある。ここからも役所の意図を読み取れることができる)。

政策面で政治主導が強まり、官僚の影響力低下がいわれているが、何といっても霞が関は国家権力そのもの。監督官庁が出す報告書が関連業界に与えるインパクトは大きい。

報告書で取り上げる内容や書きぶりについて役所の内部で議論が白熱することがある。ときには業界団体や族議員などを巻き込んで混乱を来すこともある。

金融庁でいえば金融商品の不適切な販売が発覚したとしてこれを報告書で取り上げるか否か。取り上げるとしてどのくらい強い言葉で非難するかなどだ。

こうした葛藤を経てあるものは本文に残り、あるものは注記に押しやられ、またあるものは報告書から完全に消える。本文に残ったものは多くの関係者に是認されたもので「概ね想定の範囲内」といえるものが多い。他方、注記にすら載らなかったものは当面、指導やモニタリングの圏外に去ったとみてよいだろう。問題は報告書のキワである注記に残った記述だ。

本文に外貨建て保険や仕組み債、注記にファンドラップ

では、「モニタリング結果」を見ていこう。 ここでは「販売・管理等における態勢面の課題」として①外貨建て一時払保険②仕組み預金③仕組み債④その他のリスク性金融商品――の4つを挙げ、特に外貨建て保険について契約期間の短期化による運用成績の悪化、適合性の原則の検証が不十分な点などを指摘。同商品の販売実態に厳しい見方を示している。

ここから当局が外貨建て保険の在り方を問題視していることは明らかで、既に対応を迫られている金融機関も少なくない。だが、こうした内容は事前に伝わっており、例えば三井住友信託銀行は報告書の公表前に一部の外貨建て保険の販売を停止している。

一方、注記には何が書かれているか。最も目を引いたのは17ページにある注記50だ。報告書には難解な記述が載っているが、その意味はこうだ。

「期待リターンAから総コストBを引くとネットの期待リターンCが残る。このCを先のBと比べると、ファンドラップの一部のコース(最も保守的なもの)では、BがCを上回っている(A-B=C<B)」

つまり、顧客の資産とリスク負担で獲得したリターンの過半がコストとして金融機関に吸い取られている構造だ。中には、「Cがほぼゼロのケースもある」という。これでは顧客は業者を食わせるためにファンドラップを契約したようなもので、金融庁としては見過ごせないだろう。

 

 

ファンドラップは生き残るか、助言ビジネスの高度化に望み

期待リターンの過半が総コストに食われてしまうファンドラップの問題点が注記に書かれた以上、関連する金融機関はいずれ当局の追及を受けるだろう。ただし、優先順位は本文にあった外貨建て保険が先になるはずだ。

猶予を与えられた金融機関はこの間にファンドラップのコストを下げるかポートフォリオのリスク水準を見直して期待リターンの向上を図るなどの対応が求められる。当然、後者を取るならば、リスクを引き上げる意味と効果を顧客に説明し納得してもらう必要がある。

いわば、顧客をエデュケートするわけで、これこそ助言ビジネスであるファンドラップの神髄ではないか。リスクに尻込みする顧客に相手の年齢や保有資産、将来設計などを考慮し資産運用で適切なリスク水準を取るように導くにはアドバイザーに高いスキルと熱い情熱が求められる。ファンドラップのコストはその対価のはずだ。

どんな業種でも困難な仕事をこなすことで高いコストが正当化される。ヒアリングシートの記入内容に沿ったポートフォリオを淡々と提案し、顧客に高コストを求めるファンドラップの現状を「まっとうなビジネス」と胸を張っていえるだろうか。

ファンドラップが当局の指導の焦点になるまでにはまだ時間がある。この間に助言ビジネスとしてのファンドラップの高度化が進むことを期待したい。

自民党金融族が続々引退、金融庁は新しい資本主義会議で布石

石破政権の誕生と同時に自民党金融族の中心人物である越智隆雄・元金融担当副大臣(旧住友銀行出身)や小倉将信・元少子化相(日銀出身)らが衆院選に立候補せず、引退した。今後は村井英樹・前内閣官房副長官(財務省出身)や神田潤一・金融担当政務官(日銀出身)などが存在感を高めそうだ。

それでも、永田町の応援団が少なくなって心細くはないだろうか。内閣官房の「新しい資本主義実現会議」の資料のキワなどを読み込むと、既に布石を打っているようだ。金融庁の構想は「外堀を埋めた」ところまで到達した気がする。

なお、今回取り上げた「モニタリング結果」には注記50のほか、もう1つ極めて重大な注記がある。読者自身で探してみてはどうだろうか。

 

石破茂政権が船出した。自民党の総裁選期間中は金融課税の強化に言及して市場に波乱をもたらしたが、旧岸田派の支援で総裁選を勝ち抜いたうえ、もとより経済分野には関心が薄いこともあり、資産運用立国プランなどの経済政策は岸田路線を引き継ぐとみられる。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #フィデューシャリー・デューティー
前の記事
【みさき透】金融庁、資産運用業の監督体制を再編、担当参事官に永山玲奈氏
2024.09.03
次の記事
【みさき透】「またトラ」と運用立国と投資信託、資産運用ビジネスは日本を救うか
2024.11.19

この連載の記事一覧

金融業界人のための「霞が関の歩き方」

【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに

2025.12.25

【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ

2025.11.06

【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か

2025.08.04

【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか

2025.06.30

【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 

2025.05.16

NISAで高齢者に毎月分配型解禁へ 制度の進化か参院選対策か、それとも「自民党・ネオ宏池会」の野望か 
【緊急座談会・みさき透とその仲間たち】

2025.04.17

【みさき透】開戦前夜!?近づく貿易戦争の足音、新NISA2年目はゴールドに注目

2025.02.13

【みさき透】「またトラ」と運用立国と投資信託、資産運用ビジネスは日本を救うか

2024.11.19

【みさき透】役所の資料はこう読め!ファンドラップに「黄色信号」

2024.10.15

【みさき透】金融庁、資産運用業の監督体制を再編、担当参事官に永山玲奈氏

2024.09.03

おすすめの記事

ゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋で「225」がトップ、年末に史上最高値を更新した「S&P500」は2026年にどうなる?

finasee Pro 編集部

11月のトップは「電力革命」、静銀ティーエム証券の売れ筋の変化は新しいスターファンドの胎動か? 

finasee Pro 編集部

滋賀銀行の売れ筋ランキングが様変わり、年末を控えてインデックスファンドからアクティブファンドに流れが変わった?

finasee Pro 編集部

【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに

みさき透

【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」

Finasee編集部

著者情報

みさき透
みさき とおる
新聞や雑誌などで株式相場や金融機関、金融庁や財務省などの霞が関の官庁を取材。現在は資産運用ビジネスの調査・取材などを中心に活動。官と民との意思疎通、情報交換を促進する取り組みにも携わる。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
中国銀行で売れ筋にみる新しい流れを展望するファンドとは? 「世界厳選株式」や「国内小型株」などが人気
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
SBI証券で再び米国大型テック株への関心高まる、新設「メガ10インデックス」もランクイン
楽天証券の売れ筋で「オルカン」がトップに。米国市場への警戒感を背景に「世界のベスト」もランクイン
悲観相場の救世主は日本株×高配当×ETF? 
大和アセットとブルームバーグがタッグ
三菱UFJ銀行の売れ筋で「日経225」と「S&P500」の評価が急落、評価を高めたファンドは?
楽天証券の売れ筋にみえるインデックスファンドとアクティブファンドの差、長期の投資で成功するためには?
新連載/プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
【第1回】プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
11月のトップは「電力革命」、静銀ティーエム証券の売れ筋の変化は新しいスターファンドの胎動か? 
【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
変化の時期における「長期投資家」の立ち位置は?ベイリー・ギフォード共同経営者に聞く
常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?
今年の漢字は「熊」ではなく「牛」、26年末は日経平均株価6万円に! 暗号資産ETFが出てくれば…日証協会長が会見で見解
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
ゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋で「225」がトップ、年末に史上最高値を更新した「S&P500」は2026年にどうなる?
滋賀銀行の売れ筋ランキングが様変わり、年末を控えてインデックスファンドからアクティブファンドに流れが変わった?
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら