finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 投信のマイナスフォローが精神的につらすぎます。怖いです!」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2024.08.23
会員限定
「支店長! 投信のマイナスフォローが精神的につらすぎます。怖いです!」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第10回目です。

Q:職員「支店長! 投信のマイナスフォローが精神的に
つらすぎます。怖いです!」

A: 支店長「フォローは大変だと思いますが、ルールに従ってお客さま本位で頑張りましょう」

 

森脇's Answer:

分からないものを恐れないために、相場変動に動じない理解が大切

質問者の気持ちはよく分かります。かつては筆者も相場変動のフォローがとても怖く、逃げ出したいと思っていました。しかし、あるお客さまの言葉で目の覚めるような思いとともに、自分が何をすべきかに気づくことができました。

「投資した資産が下落するなんて当たり前です。深刻ぶって連絡してこないで!」。これは、筆者が初めて経験した相場下落時に、株式投資信託を大口契約していた80歳代女性のお客さま(A様)から言われた言葉です。

人は理解できないもの、分からないもの、知らないものに恐怖を感じる傾向があります。自分の向き合う対象が何なのか分からなければ、対処方法も分からないため、その問題からただ逃れようとするでしょう。

一方で、怖さの理由やその正体が分かれば、冷静に対処方法を考えることができます。筆者が投信フォローを怖いと思っていた原因は二つです。一つは、投資の何たるかを知らなかったこと。

もう一つは、お客さまを知らなかったことです。相場とは常に変動するものであって、大きく下落する局面もあります。それゆえに、投資金額がマイナスになることは当然あるものなのです。その当たり前のことを投資経験が豊富なA様は十分に理解しており、下落にも全く動じないだけのリスク許容度を持っていたのです。そのことに気づいた筆者は、A様のようにリスクに耐えて投資を続けられるお客さまを増やそうと決意しました。

お客さまが投資について理解し、相場変動を受け入れる用意があれば、マイナス時のフォローはとてもスムーズになります。担当者が適切に案内できれば、相場変動時にはむしろ追加購入を検討するお客さまが増えるようになります。

そのためにまず実践してほしいのは、購入時に「購入直後に相場が下落することもあり、しかもそれは日常的であること」を伝えることです。相場下落時にお客さまの訴えで多いのが「元本保証ではないということは知っていたが、こんなにすぐにマイナスになるとは思わなかった」というものです。購入時は楽観的に良い結果ばかりを想像しがちなので、あえてネガティブな状況を強調して心の準備をしておく必要があるのです。もしこのように伝えて、購入を見送るお客さまがいたら「マイナスに耐えられないお客さまに販売しなくてよかった」「将来のクレームの芽を摘んだ」と考えてください。

本連載第7回の記事で顧客本位と顧客満足の違いについて触れていますが、このように下落について注意を促すのはまさに顧客本位の営業活動だと言えます。下落時の話をすると、せっかく購入を考えていたお客さまが投資をやめてしまうと思われがちですが、実はむしろ逆に購入を決断することが多いのです。筆者は購入を迷っている人が腹を決める瞬間に幾度も立ち会いました。その姿は健気で感動さえ覚えます。

対面金融機関の付加価値は長期投資をサポートすること

いくら相場は下落するものと理解していても、いざ実際に下落すると不安になるものです。その際には、投資した当初の目的を思い出してもらいましょう。老後の資産形成など長期投資を始めた時の考えを再確認できれば、不安に駆られることなく継続保有することができるでしょう。

また、マイナスだけでなくプラスの場合も同様です。目的が長期投資であれば、目先の利益を追って解約することなく保有し続けることが中心になるでしょう。少しプラスになったから売却して、次の購入のために下落を待っていたが、なかなか下落せずに再度購入するチャンスを失ってしまい、結局保有し続けた方が成績が良かったなどという例は枚挙にいとまがありません。

対面金融機関の提供できる付加価値はお客さまの長期投資をサポートできるということにあります。長期投資の過程では、一人ひとりのお客さまの担当者は何度も代わっていきますが、組織として寄り添い続けることができます。自分の担当期間を超えた視点でお客さまと接していきましょう。

支店長が部下を知る、その姿勢が顧客本位の活動を支える

知識や経験の不足する担当者が、マイナス時のお客さまフォローに不安を覚えるのは当然のことです。不安を訴える担当者に、ルールに則って対応するようただ指示するだけでは、職員の心は離れてしまい、「分かりました」と答えつつ遠からず退職を決意するかもしれません。支店長はじめ管理職の皆さんには、ぜひ現場職員の悩みに耳を傾けてほしいのです。

職員が訴えてくる不満の全てに対処して、解消することは難しいでしょう。しかし、経験や知識不足が根底にある場合には、適切なアドバイスとサポートにより職員の成長意欲は大いに引き出される可能性があります。顧客本位活動の一丁目一番地は“お客さまを知る”ことですが、支店長が、その活動をする“部下の〇〇さんを知る”という姿勢が、顧客本位の活動を強力に下支えするものと信じています。

Q:職員「支店長! 投信のマイナスフォローが精神的に
つらすぎます。怖いです!」

A: 支店長「フォローは大変だと思いますが、ルールに従ってお客さま本位で頑張りましょう」

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
部下からの素朴でド直球な質問に答えられますか?
人気連載「こたえてください支店長」まとめ読み
2024.08.13
次の記事
「支店長! 投資信託の定時定額購入はお客さま本位の提案だと思うのですが、一括購入は違うと思いませんか?」
2024.09.20

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

2025.06.20

「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」

2025.05.23

「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」

2025.04.25

「支店長が代わると方針や雰囲気が変化して戸惑います! 」

2025.03.21

「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」

2025.02.21

「支店長! 他の金融機関と比較して、投信の取扱商品が少ないので投資の案内がしにくいです!」

2025.01.24

「支店長! 今年は日銀が金利を上げてきましたが、お客さまに提案する商品に変化はありますか?」

2024.12.20

「支店長! 60 歳男性に対して投資信託の商品は何を提案するのが正解ですか?」

2024.11.22

「支店長! 投資信託の購入金額がNISAの枠内になってしまい、大口での契約が取りにくいです」

2024.10.25

「支店長! 投資信託の定時定額購入はお客さま本位の提案だと思うのですが、一括購入は違うと思いませんか?」

2024.09.20

おすすめの記事

野村證券の売れ筋にみえる積極的なリスクテイク姿勢、売れ筋ランキングをかけ上がったファンドとは?

finasee Pro 編集部

日本資産運用基盤の大原氏が思い描く「ETFホワイトレーベル」の先の未来とは?

川辺 和将

eスマート証券の積立設定金額ランキングで急浮上した国内株ファンドとは?

finasee Pro 編集部

マン・グループの洞察シリーズ⑩
プライベート・クレジットの誤解を解く

松井証券の売れ筋にみる優れた世界厳選株式ファンドとは? ピクテと三菱UFJの「純金ファンド」の違いは?

finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
日本資産運用基盤の大原氏が思い描く「ETFホワイトレーベル」の先の未来とは?
eスマート証券の積立設定金額ランキングで急浮上した国内株ファンドとは?
野村證券の売れ筋にみえる積極的なリスクテイク姿勢、売れ筋ランキングをかけ上がったファンドとは?
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
② 投信窓販において収益性と顧客本位をどう両立させるか
松井証券の売れ筋にみる優れた世界厳選株式ファンドとは? ピクテと三菱UFJの「純金ファンド」の違いは?
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
① 「長期・積立・分散」だけが顧客本位なのか
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
マン・グループの洞察シリーズ⑩
プライベート・クレジットの誤解を解く
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
楽天証券の売れ筋「米国株」にみるパフォーマンス格差、「高配当株(SCHD)」不振の理由は?
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
① 「長期・積立・分散」だけが顧客本位なのか
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
③ 金融行政に本部が過剰反応?対面金融機関の役割とは
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
② 投信窓販において収益性と顧客本位をどう両立させるか
松井証券の売れ筋にみる優れた世界厳選株式ファンドとは? ピクテと三菱UFJの「純金ファンド」の違いは?
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
楽天証券の売れ筋「米国株」にみるパフォーマンス格差、「高配当株(SCHD)」不振の理由は?
年金機構の業務報告ににじむ法改正後への懸念、そして年金保険料の納付率が低い都道府県は…
新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
SBI証券の売れ筋インデックスファンドにみえる限界、波乱の株式市場の中でパフォーマンスによって人気を集めたファンドとは?
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
① 「長期・積立・分散」だけが顧客本位なのか
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
③ 金融行政に本部が過剰反応?対面金融機関の役割とは
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら