2026年の金利はボラタイルに
――まず2025年のグローバル債券市場の動きを振り返って、印象的だったことは何でしょうか。
印象的だったのは、各国中央銀行の金融政策が大きく乖離したことです。米国の連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行は利下げの最中で、欧州中央銀行(ECB)は最近の理事会でも金利を据え置き、オーストラリア準備銀行は利上げに踏み切る見込みの一方で日本銀行は利上げというように、緩和路線と据え置き、さらには引締め路線とが混在しました。
2025年は年間を通して地政学的な緊張が高まりましたが、社債市場に関しては大企業のスプレッド市場を見る限り、スプレッドは2024年とほぼ同じ水準を維持し、それほど荒い動きは見られませんでしたし、リスク資産の価格も、大きく値下がりすることはありませんでした。
しかし、2026年は株式市場など、リスク資産のボラティリティは、現状に比べて高くなる見込みです。こうしたなか、ますます債券投資の妙味が高まっていくものと見ています。
米国、英国の長期債、米国の投資適格社債と証券化商品に妙味
――債券市場ではさまざまな債券が取引されています。そのなかでも投資妙味の高いものは何でしょうか。
地域とセクター種別の2つの観点から選別できます。まず地域で見ると、金利水準を含むトータルリターンで投資妙味の高い地域を選ぶことが重要です。たとえば米国や英国は、まだ金融緩和が継続されると考えられ、その点からすれば、金利低下によって価格上昇が期待される長期債への投資は魅力的です。
一方、政策金利は据え置いているものの、市場金利の上昇圧力が強まると見られているユーロ圏、オーストラリア、日本についてはやや慎重に見ています。というのも、金利が上昇傾向をたどり始めたら、債券価格が下落して潜在的リターンが低下することになるからです。
また新興国については、世界的なインフレの鎮静化に伴い、徐々に金利水準は落ち着いていくものと見ています。米国の金利低下が進めば現地通貨建て債券の投資が有利になりますし、南アフリカのように現在行われている経済構造改革によってリスクプレミアムが低下し、それが投資妙味につながる国もあります。南アの他に、一部のラテンアメリカの諸国にも注目しています。中国に関しては、政策が不透明であり、経済の低迷も長引いているため慎重です。
次に、セクター種別で見ると、米国の投資適格社債、ならびに証券化商品に妙味があると考えます。米国経済の成長性が依然としてポジティブな中、これらのクレジットセクターはファンダメンタルズに支えられることになるでしょう。もっとも、冒頭に述べた通り、2025年に比べて26年は市場全体のボラティリティは高まるでしょうが、財務健全性の高い大企業の社債市場に関しては引き続き安定的な値動きとなると見ています。特に保険ブローカー、アセットマネジメントなど、ディフェンシブなセクターに注目しています。
また証券化商品については、CLO(ローン担保証券)やRMBS(住宅ローン担保証券)のうち格付けがAAクラスのものが良いでしょう。
その代わりとして、ハイ・イールド社債は今後、マーケットのボラティリティが高まると予想されるため慎重に見ています。
ハイ・イールド債を選ぶ視点
――あえてハイ・イールド社債の中から投資対象を選ぶとしたら、何が良いですか。
保有するハイ・イールド社債の銘柄選択にあたっては、よりクオリティの高い企業を選んでいます。格付けで言うとBB格、せめてB格以上のものが対象です。現在、ベースとなる米国債の金利水準はある程度の高さを維持しているので、BB格でも十分に高いリターンが期待できます。
興味深いことに、この10年間で、ハイ・イールド社債市場の構成が大きく変わってきました。このセクターの中で相対的にクオリティの高いものが、ハイ・イールド社債市場全体の大部分を占めるようになってきています。かつてのハイ・イールド社債市場は「ジャンク債」などと言われたように、経営破綻に直面した企業の社債が多数、流通していましたが、多くの場合、この手のディストレストな債券発行による資金調達は、「ダイレクトレンディング」などと呼ばれる機関投資家によるプライベートなクレジット市場へと移行しています。主に機関投資家による投資で急速に成長したプライベート・クレジット市場は、経営困難に陥った企業が、ハイ・イールド債市場から離れ、資金調達を行う市場として拡大しました。
日本にも到来「金利ある世界」、長期金利の上昇局面での着目点
――日本の長期金利が2%近くまで上昇してきています。高市政権による積極財政政策の影響もあると思いますが、日本の債券市場への投資についてはどう見ていますか。
目下、日本の消費者物価指数は3%に達しており、インフレ期待が高まっているところに、高市政権は積極財政を打ち出しています。したがって当面は金利上昇の可能性が高く、したがって10年債以上の長期投資については、慎重な見方をせざるを得ません。
ただ、日銀の利上げとともに市場金利もさらに上昇していくことが予想される過程において、国内債券投資の魅力がやがて回復していくはずです。
米国では、2020年のコロナショック以降、金利が大幅に低下し、新たな債券投資の魅力は大きく後退していましたが、2022年以降は政策金利が大きく転換して持続的に高めの金利水準に転じたこともあり、債券投資の魅力が回復しました。
今後、日本の長期金利が3%、4%…という水準にまで上昇していく過程では、債券に対するバリュープロポジションは高まるでしょう。もちろん、金利水準がピークを付けた時に債券のポジションを高めるのが理想ですが、ピークのタイミングを当てに行くのは容易ではありません。ピークを待つのではなく、ある程度、早めにアロケーションすることをお勧めしますし、ピークをつけるところまで待ってしまうと、むしろ遅きに失する恐れがあります。
ポートフォリオへの債券組み入れの意義
――個人の長期資産形成において、債券が果たす役割は何ですか。
過去、債券投資の価値は低かったわけですが、2026年以降、日本でもその価値は上がっていくと見ています。
これまで日本の金利はゼロ近辺の水準でしたが、それがようやく「金利ある世界」へと転換しつつあります。
そうしたなか、これからはイールドカーブを意識する必要があります。足元の日本国債の利回りを見ると、30年債で3.3%台、40年債で3.5%台となっており、特に超長期の資産形成を行っていくうえで、安定的にこの利回りが得られるのは魅力です。しかも債券をポートフォリオに加えることにより、ポートフォリオ全体のボラティリティを抑制する効果も得られます。
前述したように、利回りがピークをつけにいく局面で債券投資を始めても、タイミング的に後れを取る恐れがありますから、まさに今から債券投資を検討するべきだと思います。
