――ビジネスモデルの特徴を教えてください。
当社は「個々に最適なパーソナル資産管理サービスの提供」をコンセプトに掲げています。具体的にはお客さまの人的資産(キャッシュフローを生み出す力量や年数)に合わせて、保有する金融資産の最適化を提案しています。
貯蓄や投資だけでなく負債も含めたバランスシート全体を分析するところも重要なポイントです。個人の負債の典型は住宅ローンでしょうが、ほかにも教育費や介護費などがあるでしょうし、資産家であれば相続税という巨大な負債が待っています。当社はお客さまに生じうる潜在的な負債イベントを可能な限り考慮し、バランスシートの資産サイドでは金融資産はもちろん、お客さまが将来生み出すであろうキャッシュフローまでシミュレーションしたうえで、一人ひとりにふさわしいアセットアロケーションを組んでいます。
近年、国内の資産形成サービスでも「ゴールベース・アプローチ」が広まりつつありますが、当社のサービスはそれとは多少異なります。経済環境の不確実性が高まり、個人のキャリアの多様化が進む時代にあって、「何歳までに名目でどれほどの個人資産を築くか」という単純なゴールを設ける方法には限界があります。
当社が想定する人的資産とは、お客さまの健康やスキル、経験、魅力などを幅広く含みます。こうした要素から生涯年収の現在価値を算出します。たとえて申せば、お客さまを債券の銘柄に見立て、退職という「満期」や給与所得という「利息」があると考えます。営んでいる事業の持続性や転職市場での評価といったお客さまの人的資産価値を当社がさまざまな角度から見積もることによって、資産管理の最適バランスを提案しています。
顧客の年齢層は40~50代が7割近くを占めています。職業別では経営者および法人、個人事業主が6割弱を占めており、預かり資産でみると8割を占めます。「事業に集中できるよう、資産管理をまかせたい」と考える経営者のニーズに応えられていると感じます。
主な収益源は投資信託の販売手数料と信託報酬の一部です。ファンドラップの形態も検討したものの、それですと投資信託を保有する手数料と、ファンドラップを利用する手数料の二重取りになってしまうので、やめました。
――ポートフォリオの運用方針や商品ラインアップは。
当社で扱う商品は原則、投資信託のみです。約180億円の預かり資産のうち95%を投信が占めています。個別銘柄も結構ですが、やはり大事な将来に向けてお金を備えておく保管庫としては、投信が最適だと思います。私はIFAとして独立する以前、長らく投資信託の企画分析業務に携わっていました。日本のIFAは証券会社の営業出身の方が多いなか、当社のような運用まわりに詳しいIFAは珍しい存在だと思います。
以前はインデックス型とアクティブ型の両方を取り扱っていましたが、現在はほぼアクティブファンドのみを対象としています。特に経営者の方は自ら事業を営んでいるからこそ、「いくら手数料コストが安くても変な企業には投資したくない」という思いが強い傾向にあります。外食にたとえれば、チェーンの牛丼店も素晴らしいですが、「お金は払うから、少ししゃれたレストランに行きたい」というニーズにもしっかり応えるために、個別企業への丹念なエンゲージメントやモニタリングに基づいた良質なアクティブファンドを提供しています。主な商品は「キャピタル世界株式ファンド」や「モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン」「フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド」などです。
――具体的にどのようなポートフォリオを提案していますか。
ある50代経営者の事例を紹介します。この方は数年前にM&Aで株式売却後も、経営者として会社に残り仕事をしています。経営者としての能力が高く、70歳まで現役で仕事をする予定です。引退までは役員報酬の収入も見込めます。人的資産が強く、お子さんの教育費もあと少しで完了します。
金融資産のリスク許容度が大きいため、同世代の方よりバランスシートの投資比率を高め、かつ株式の割合を高めることも可能です。このお客様の投資ポートフォリオは、先ほどのアクティブファンド3銘柄が4分の3を占めており、残りの4分の1も別のアクティブファンド3銘柄で構成しています。
――今後の展望は。
私は創業から20年近くにわたり、ブティックのようなスタイルでIFA事務所を運営してきました。規模としては大きくはありませんが、質の高いサービスをお客さまに提供できるよう、最善の努力を尽くしてきました。自分のなかでも手ごたえを感じ、昨年から事業の拡大へとかじを切ることにしました。IFAの採用も増やしていきますし、中小企業向けのサービスを拡充させます。
このたび法人向けサービスの一環として、世界有数のアクティブ運用会社として知られるキャピタル・グループの運用力を活かした「企業型確定拠出年金プラン」の導入コンサルティングを始めました。
これからの日本経済は中小企業を活性化できるかにかかっています。大企業は巨大がゆえに組織疲労を起こしやすく、若い世代がベンチャーや中小企業に転職するケースも増えています。このような状況認識のもと、当社は小さくてもキラリと輝く企業の経営者が仕事に集中できる環境を整え、社員の福利厚生もしっかりサポートする重層的なファイナンシャル・サービスを展開していく所存です。