富裕層向けに開発した運用商品は、やがて中間層へ
米田氏 日本がアジアのなかで一目置かれる法治国家・民主国家として今後も国際的なリーダーシップを担っていくには、その前提として国内の中間層がリッチであることが不可欠です。それなりの資産を持っている人々がそれなりの教育を受け、みずからの資産や権利を守っていこうとする営みによって、基本的人権が守られる社会が醸成されます。しかしマクロ経済的な指標をみれば、先進国のなかで日本は米国に次いでジニ係数の悪化が顕著です。格差の拡大が様々な社会不安を招きかねない状況にあると私はみています。
かつてのような高度経済成長時代を再生することは、なかなか難しい。事後的な政策としての所得再分配は、税制や福祉制度の問題がからむため国会審議が必要になり、政治の不確定要素が多い。そこで私が格差是正の第3の道として着目するのが、個人が自らを律して長期の積立・分散投資に励むことで、全ての人が高齢時代を迎える頃にはバランスシート・リッチになり、中間層の劣化を抑えられるという可能性です。
高橋さんは三井住友銀行でプライベートバンキング部門を担っており、相手とする顧客は富裕層です。その高橋さんに、あえてお伺いしたい。社会的な影響力のある富裕層向けの金融サービスは、中間層劣化を防ぐためにどのような役割を果たせますか。
高橋氏 我々が提供している富裕層向けのプライベート・バンキング・ビジネスと中間層の諸課題とは、表面的には全く相いれないようにもみえます。実はしかし、重なる部分や連関する部分は非常に大きいと思います。