連載の意義――なぜ今、国民的資産形成が問われているのか
日本の中間層が劣化している。それは後述のジニ係数や相対的貧困率の数値を見ても明らかだ。中間層が衰退して崩壊すれば治安を悪化させるだけでなく、就業人口の減少やその質の劣化につながり、ひいては日本の産業構造の高度化も停滞させることになる。所得の高低にかかわらず、また資産の有無にかかわらず、中間層の崩壊は全ての人にとってコストの大きいものであることを意識する必要がある。
安全保障の問題を除けば、日本の大きな課題は、①人口減少と少子高齢化②低成長③貧困化の3つと言われている。このうち貧困化については一般に経済成長率を上げ、所得再分配のシステムを改善することで解決できるとされる。
私はこの3つに加え、個人にとって明日からでも自分自身の決定で解決できるという意味で、自らの行動変容についてコントロールできる可能性が高いリスクヘッジ手段としての資産運用の意義を、この連載では提起していきたい。