「行為」が不適切であれば、販社に賠償責任を負わせる
それでも一部の販売会社がヘッジファンド型投信や隔月分配型投信のセット販売を強行したらどうなるか。NISA協議会での追及や当局による行政処分も脅威だが、最も懸念すべきは対象ファンドが国税庁に「新NISA非適格」と見なされ、売却益などに課税されてしまうことだろう。
冒頭に記したように、税金はいったん個人投資家が負担した後、金融機関側が賠償する流れになる。金融庁は当初、賠償責任は非適格ファンドを届け出た運用会社にあるとしていた。
しかし、いくつかの地方銀行が金融庁の運営する金融行政モニターを通じて賠償責任を問われる対象を当局に問い合わせたところ、「一義的には販売会社が負担すべきと考えますが、いかがでしょうか」との回答があったと聞く。
「いかがでしょうか」という言い回しに、方針転換の余地を残しているが、当局に確認したところ契約している弁護士に相談したうえで、「販売行為」の責任は販売会社に取らせるとの結論に至ったという。
また、運用会社の責任だと整理してしまうと、運用会社Aの奇数月分配型と運用会社Bの偶数月分配型を販売会社Xが販売した場合、責任を追及する先が見当たらないという面もある。
イタチごっこではなく、官民で正面からの議論を
新NISAの成長枠商品を巡るゴタゴタを見ていると、「商品規制」で民間のビジネスを導くことの難しさを痛感する。毎月分配型でもヘッジファンド型でも、「売れる」とみればルールの抜け道を見つけ出す業者が現れるからだ。そうした商品を手当たり次第に叩いても、資産運用業の高度化につながるとは思えない。
当局は対話の手間を惜しまずルールの根拠、例えばなぜデリバティブ取引が不可なのか、なぜ高レバレッジ規制から転換したのかを重ねて説明する必要がありそうだ。
金融業界も例えば毎月分配型を認めてほしいならば、過度な分配をしない、資産形成層には販売しないなどの方針を打ち出したうえで、リタイアメント層に分配ニーズがあることを粘り強く訴えるべきだろう。官民が正面から議論することが望まれる。
万が一、新NISAの非適格商品の問題が国税庁の徴税権によって解決されるとしたら、金融業界に身を置く一人として残念なことに思う。
執筆/霞が関調査班・みさき透
新聞や雑誌などで株式相場や金融機関、金融庁や財務省などの霞が関の官庁を取材。現在は資産運用ビジネスの調査・取材などを中心に活動。官と民との意思疎通、情報交換を促進する取り組みにも携わる。