政府は、2022年11月に公表した「資産所得倍増プラン」の7本柱の一つとして、「安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実」を掲げた。新たに設立する金融経済教育推進機構を中心として、官民一体となった効率的・効果的な金融経済教育を全国的に実施するとしている。
成年年齢が18歳に引き下げられた2022年4月から、高校では先行して金融教育が義務化され、家庭科の中で資産形成の授業がスタートしている。授業では、収支バランスの重要性のほか、社会保険・資産形成・民間保険の適切な利用、目的別の金融商品活用による資産形成、計画的な借入返済、金融トラブルへの対応術などの基礎知識を学ぶこととなっている。
筆者は、昔々に家庭科の授業で習った基本的な調理や裁縫の知識があったおかげで、我が人生をつつがなく過ごすことが出来ている。金融知識も、安心・安全に人生を送るために大変有益なものであり、学生の皆さんには、しっかりと学んで欲しいと願っている。一方、家庭科の金融知識は基礎的なレベルに留まっており、具体的にどのような金融商品・サービスを、どのようなタイミングや手法で利用していくべきか、などを個々人が適切に判断していくには、さらなる知識習得が必要である。今回の金融経済教育推進機構は、まさにその習得支援を担うことになる。
その流れで、「顧客本位の業務運営」に関する昨今の金融庁の動向を踏まえ、中立・公正な立場から金融アドバイスを提供する際に、まずはどのような知識を個人投資家に提供すべきか私見を述べてみたい。