「DX人材」が足りないと言われるが…
日本の金融機関は他業種に比べ、自社のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取り組みを自負している傾向にある。情報処理推進機構(IPA)の『DX人材白書2021』によると、金融・保険業において「全社戦略に基づき、全社的または一部の部門においてDXに取り組んでいる」と答えた割合は62.8%だった。他4業種の平均は45.4%で、金融・保険業の割合がトップとなっている。
そのようにDXに前向きな金融機関でさえ、経営層や現場からは「ヒト」にまつわる憂愁の声が聞かれる。例えば、預金者向けのモバイルアプリを開発しているものの「人材が足りず機能を削減せざるを得ない」、融資中心の既存ビジネスから脱却すべく“デジタルラボ”に人材を投入したが「一向に成果が出てこない」といった嘆きである。そして、決まって次のように愚痴をこぼすのだ——「わが社にはDX人材がいない」と。
各社は何年も前から「デジタル人材強化施策」として育成コンテンツを取り入れるなど、熱心に取り組んできているように見える。職員数も潤沢である。DXを推進する方針に異論を唱える者もいない(ただし具体的な戦略と計画はない)。
ならば、なぜこうも人が育たないのだろうか?我々はいま一度、「DX人材」とは何であるのか、どう育成できるのかを、解像度を上げてひも解く必要性に迫られている。
本連載「アクセンチュア式・金融DX人材の取説」を通じて、ポイントをお伝えしたい。