前回は、社会経済のマクロデータを分析することで、日本の中間層の劣化を指摘した。今回は、その社会的コストを考えたい。
そもそも分厚い中間層があるからこそ、民主主義や基本的人権の尊重、とりわけ昨今注目されている多様性の価値観を背景とした個の尊厳(dignity)が守られている。中間層の劣化は個の尊厳が脅威を受けると私たちは認識する必要がある。また、中間層の崩壊は単に強盗などの凶悪犯罪が増えるといった治安の悪化にとどまらず、むしろ国民の明日への希望が徐々に失われ、社会経済が全体として停滞していくことであり、そのことこそが大きな社会課題であると問題提起したい。